霧島さん
第6章 霧島さんと先生
ーーーーーー…
「それにしても、随分可愛いことしてくれますよね」
「え?」
「服」
志月さんがマグカップを両手に、ソファーに座りながら意地悪そうにそう言った。
そ、そうだった。
寂しかったからって志月さんの服着てたんだった…!
「か、勝手に着てすみません」
「全然良いですよ。寧ろここの部屋のものは自由に使ってもらって大丈夫ですから」
温かいココアが入ったマグカップを私に渡しながら優しく笑った志月さんに、キュウッと胸が締め付けられる。
以前と何ら変わらない態度。まるであの日は夢を見ていたんじゃないかってくらい変わらない。
けど…
「この二日間、本当のことを霧島さんに話していいかどうか、迷ってたんです」
不意に影を落とした彼に、やっぱり夢じゃなかったんだって知る。
「本当のこと…ですか?」
「はい。俺の事や先生の事…そして、霧島さんのことを」
ピクッ
マグカップを持った私の手が自然と震えた。
「先生と、私のことって…?」
志月さんは先生と直接会ったことがあるわけじゃない。なのに、一体何を知っているっていうのだろうか?
混乱する私に気づいた志月さんが、心配そうに顔を歪ませた。
「霧島さん、大丈夫ですか?」
「あ…ごめんなさい。少し驚いただけで…。教えて下さい、」