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霧島さん

第6章 霧島さんと先生



「ーーそれで、ここに引っ越して来たんですか…?」

「はい」


「…けど、どうしてそこまでして…」


私を助けようとしてくれたのだろうか。



唯の噂だと放っておくこともできたはずなのに、警察が長い間探しても見つからなかった私をこの人は見つけてくれた。


そして、今こうして私を救ってくれている。


「ーー…他人事だとは思えなかったんです」


「え?」


「俺も、幼い頃に両親を亡くしているんです。けど、俺には筧もいたし、引き取ってくれる祖父母がいました。

だから、肩を預ける人のいないその女の子は、すごく苦しい思いをしているんじゃないかと、勝手に思ったんです」


きゅっと、握られた手に力が込められる。


「貴女の部屋の扉を見た瞬間、嫌な予感しかしなかった。だから、無理矢理にでも貴女をそこから連れ出そうと、突拍子のない行動で驚かせてしまってすみませんでした」



あぁ。あのベランダ事件。


あの時は動揺したけれど、今思い出すと笑ってしまう。


「いえ、そのおかげで、今こうして志月さんといられるんです」


「……」


笑みを含みながらそう言うと、志月さんは何故か表情を曇らせた。


「…志月さん?」


俯きがちな彼の顔を覗き込むと、


ぐいっ

「!?」


突然握られていた手を強く引っ張られ、抱きしめられた。


突然のことに目を瞬きさせる。



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