
霧島さん
第6章 霧島さんと先生
「そ、そんなこと…」
そう言うと、志月さんが少しだけ体を離して私を見つめた。
そして、私の頬に手を添えるとコツンとおでことおでこをくっつけた。
目の前で長いまつ毛が揺れる。
「ーーーだから、貴女に好きだと言われた時、思わず動揺してしまったんです。
もしかしたら、俺が好きだと思い込ませてしまったんじゃないかって」
苦しそうに眉根を寄せた志月さん。
ーーーだけどちょっと待って…。私が告白した時そう思ったのなら…。
『俺は、一度だって君を本当の意味で愛しいと思ったことはないんです』
もしかして、あの言葉は嘘で。
『だって、愛しいと思ったんだから仕方ないじゃないですか』
この言葉は本当だった……?
それなら一体…、
「志月さんは…いつから私のことを…?」
「…え?な、何ですか突然」
私の問いに僅かに顔を赤くさせた志月さんに、あれ?と口元が緩む。
「いつからですか?」
「待ってください。お、俺は真剣に悩んで……、」
「志 月 さ ん」
「……、」
今度は私が彼の頬を両手で包んで、無理矢理視線を合わさせた。
眉根を寄せたまま視線だけ逸らした志月さんが、観念したように口を開く。
「………言ったでしょう。貴女に好きって言われて嬉しいって。自覚したのはあの時です。
けど、多分…。きっと、もっと前から好きだったんだと思います…」
「……」
お、おお……。
自分で言わせておいてなんだけど、すごく照れくさい。
