
霧島さん
第6章 霧島さんと先生
けど…。
この人をもう不安にさせたくない。私も、ちゃんと言葉にしてこの人に伝えたい。
「私も、志月さんが好きです。多分、初めて会った時から」
「…あのベランダの挨拶、ですか?」
驚いたように目を見開かせた彼に、思わず笑ってしまう。
「はい。だって、本当はあの時、志月さんがヒーローに見えたんです」
小さな世界に篭っていた私を、強引に連れ出してくれた。
初めはどうしてそう見えてしまったのかわからなくて、苦手だと思い込ませていたけれど。
「かなり強引なくせに優しくて、時々意地悪な所が好きです。料理が得意なのに、他は不器用な所も好きです。絵が破滅的に下手な所も可愛いです。あとは…」
「も、もういいです。わかったから…それ以上言われると恥ずかしくて死ぬ…」
ポスン。と再び私の肩に顔を埋めてしまった志月さんに、キュゥと心臓が締め付けられる。
きっとこれが、愛しいってことなんだ。
「…志月さん。もう、思い込みじゃないってわかってくれましたか?」
「…十分に」
横目で見える彼の耳がほんのり色づいていて、愛しくて仕方がない。
「ハナ」
「っ」
「ハナって、呼んでいいですか、」
「…もちろんです…」
私が頷くと、やっと顔を上げた彼と間近で目が合う。その距離は吐息が触れるほどで。
「…本当は、ずっと呼びたかった」
「私も、呼んでほしかったです…」
「好きだよ。ハナが好きだ」
彼が瞳を細めて愛おしそうにそう言った直後、お互いが吸い込まれるように唇を寄せた。
