最後の恋
第3章 のりもの
飲み会の帰り道、教室の仲間で適当に分かれて、駅までタクシーに乗り込んだ。
私は偶然にも彼と同じタクシーに乗り合わせた。
後部座席に3人掛け、彼が運転席の後ろ、私が真ん中だった。
私の左隣は少し太めの男性だったので、3人で座ると腿が触れ合うくらいの距離だった。
夜景がきれいですね、とその男性が窓の外に目をやった。
本当ですね、と私も窓の外を見ようと横を向いたとき、右手にあたたかいものが触れた。
さりげなく膝の上に置いた鞄の下で、彼が私の手に触れたのだった。
男性は自分の側の窓を見ていて、こちらには気づいていないのだろう。
シートの窪みと、荷物と体のかげで重ねられた手に、気づいた様子はなかった。
握られた手をそっと握り返すと、彼がそれに応えて、指の腹で私の手の甲を撫でた。
その夜、タクシーを降りて何食わぬ顔でみんなと別れ、自分の電車に乗ったふりをした後に、彼と合流したのだった。
うまく隠していたと思ったけど、今考えてみると、もしかしたらみんなの方がずっと大人で、上手に騙されたふりをしてくれていたのかもしれないけれど。
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