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最後の恋

第4章 おでかけ


夏だから花火でも見に行こう、と、浴衣を着て花火を見に出掛けた。

あまり人目につかないように、と、知人の住居付近を避けた結果、少し遠くの花火に行くことにした。

彼の浴衣はおばあさんの手作りだそうで、普通の服屋で売っているような、薄い浴衣とは生地から違っていた。

濃い青の縦縞が、長身の彼によく似合っていた。

狭い道を少し先に立ち、私の手を引いて歩く彼の後ろ姿は、習い事のためか、日々の鍛練の賜物か、

広い肩からすっきりと背筋が伸びて、浴衣姿をきりりと引き締めており、思わず見とれた。

その日は快晴であったものの、日が落ちると風が冷たく、草の上にシートを敷いて座った私たちは、寒くて身を寄せ合った。

彼は私の肩に腕を回して抱き寄せた。

普段と違う浴衣姿の彼に抱かれ、今更ながらにどきどきしていると、身八つ口からおもむろに彼の手が差し入れられ、鼓動が跳ね上がった。

もっとあったかい、と少しいたずらっぽく笑う彼の横顔を、上がり始めた花火が照らした。

花火は素晴らしく、美しかった。

一瞬で輝き、散っていく花火のように、私たちもまた、短い恋に心を燃やしていた。

ハート型の花火が頭上に咲いたけれど、それは形が崩れた上に逆さまだった。

私たちの恋も、いびつに歪んで間違っていたのかもしれないけれど、

それでも私たちは、互いに恋い焦がれていた。

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