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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

佐村は、原宿の表参道を歩いていた。

道幅は6メートルと少し狭いが、幅いっぱいになって大勢の人々がぶつからないように

歩を進めている。

しかし、周りは十代、二十代の若者ばかりで、オジサン1人で歩いている佐村には何となく

肩身が狭い思いだ。

真後ろに人の気配を感じたその時、左腕を強く捕まれた。

驚いた佐村が見て見ると、まだ女子高生のような女の子だった。

[刑事さん、助けて。追われてるの、何処かに匿って!]

何がなんだか分からないが、見ていてかわいそうになり、咄嗟に裏道に入った。

すると、目の前にメイド喫茶が見えた。

喫茶店の看板には、ジーザスと書かれてある。

とりあえず二人は、急いで店内に入った。

佐村が店内を見渡すと、さほど客は少ないようだ。

店の売りはピザとクレープらしく、生クリームをかけたクレープが一番人気だった。

メイドが来ると、二十歳前後で瞳が大きく可愛らしい顔をしている。

テーブルの上に水が入ったコップとお絞りを、それぞれ二人の前に置くと。

[いらっしゃいませ、ご主人様]

どちらかと言うと、声もアニメ声だ。

[コーヒー、二つ]

思い切って、訊いてみた。

[名前を、教えて下さい]

[ラムちゃんです、ご主人様]

佐村の、鼻の下が伸びた。それを見たラムが、ニコッと笑った。

普通業務で笑うと作り笑顔になるのだが、彼女の笑顔は極めて自然だった。

メイドが奥に戻ると、少女に訊いてみた。

[何故、私を刑事と呼んだの?]

[グレーのコートを着ていたから、てっきり刑事さんかと。

間違えたのならご免なさい]

[あはは、何も謝る事ないよ。刑事ではなく探偵なんですよ]

それでも、少女は申し訳なさそうに俯いている。

[ところで、君の名前を教えてくれない?]

佐村はなるべく、フレンドリーに話す事にした。

[神話女子高等学校の3年で、名前は山本ルミカ]

[君も、神話女子高の----]

咄嗟に佐村が内ポケットから盛愛留の写真を取りだし、ルミカに見せると。

[この子は、親友の愛留です。昨日も此処で遊んでたの]

[あ、そうなんだ君の親友!それなら話が早い、何処にいるかな?]

佐村が訊くと、ルミカの表情も明るくなった。



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