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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

その時、ルミカの携帯に着信音がなり、ルミカが携帯に出ると。

[秀人、私メイド喫茶ジーザスにいるの。早くきて!]

と言って携帯を切った。なんだか、急いでいるようだ。

暫くすると、二十歳前後の若い男性が店内に入って来た。男が、ルミカを見ると。

[無事だったか!奴らは此処には居ない、すぐ逃げるんだ]

男の視線が、佐村に向いた。

[こちらは探偵の佐村さんという方で、私を助けてくれたの]

ルミカが、男に紹介した。

[興信所の、佐村と言います]

佐村が頭を下げると、若い男も礼儀正しく。

[僕は、横井秀人と言います。ルミカを助けていただいて、ありがとうございます]

と言って、一礼した。

横井が目で合図をすると、ルミカがうなづいて立ち上がり。

[君達、誰かに追われているのかい?]

佐村が、心配そうに訊いた。

[僕達、急ぎますので]

横井がそう言うと、ラムがレジにいたので横井が二人のコーヒー代を精算した。

[代金は、私が払うよ!]

声を掛けた佐村だったが、横井が振り向き。

[彼女を、守っていただいて感謝します。お礼をさせて下さい]

と言って、ニッコリ笑った。

頷くしかなかった佐村だが、今時珍しく礼儀正しい爽やかな青年に好感が持てた。

だが、横井の顔をよく見ると、目の下に青黒い隈ができていて焦点が合っていなかつたのだ。

[失礼します]

横井とルミカは、互いに手を取り合って駆け足で店を出て行った。

二人の後ろ姿を見ながら佐村は、駆け落ちをしたカップルのように見え、彼らは近松門左衛門の文楽みたいに心中をしてしまうのではないか---。

不吉な予感を、覚えずにはいられなかったのだ。

彼らは、生き急いでいる。このまま、放っておいて良いのだろうか。

二人を見ていると、死神がほくそ笑んでいるような。

また一口コーヒーを啜ると、佐村のスマホにも着信音がなり、出て見ると毛瀬法子からだった。

[わたくし、今日事務所に伺いしました毛瀬ですが、大事なお話しがありますので自宅に来て貰えないかしら。

運転手が迎えに行くので、原宿駅で待ってて下さい。後は運転手が案内します]

[分かりました、すぐ伺います]

電話を切り、スマホをコートのポケットに仕舞うと、残りのコーヒーを飲み干し、そのまま店を出た。

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