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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

原宿駅前では、1台の車が注目の的になっていた。

老若男女を問わず、外車に釘付けになっている。

そこに佐村が走って来ると、大勢の人だかりが出来ている。

[いつか俺も、乗って見たいぜ]

[運転して見たいな]

佐村が近寄って見ると、高級外車ロールスロイスだった。

1台、何千万円とするだろう。

[流石、盛財閥]

思わず、佐村も呟いた。

近づくと運転手が頷き、後部座席に乗り込んだ。

乗ったはいいが、周囲の視線が突きささる。

視線を外すと、静かに発進した。

窓の外を見れば、歩道を歩いている人間が振り向き、熱視線を集めた。

もったいないような気もしたが、なんだか佐村自身も盛一族の仲間になれた気がして、

優越感に浸る事が出来た。

高級車は西に向かい、田園調布の高級住宅地へと入った。

此処一帯には、芸能人や政治家の有名人が多数住んでいる。

その高級住宅街の中でも、一際大きな邸宅の前に車は止まった。

自動で門が開き、ゆっくりと中へ入って行った。

住宅は真っ白な外壁の3階建てで、その横には日本庭園がある。

自宅と庭園で、百坪はあろうか、庭園だけでもかなり広い。

ロールスロイスが邸宅前の駐車場に止まると、佐村が車から降りた。

邸宅前に立ってみると、庭園を見おろす事が出来た。

庭園に敷き詰められた砂利は、どれも同じ大きさだった。

中央には池があり、池の真ん中には中島もある。

その池には、50センチ以上の何匹もの錦鯉がゆったりと泳いでいる。

オレンジやピンク等のカラフルな錦鯉が口をパクパクさせている。

これ程の庭園を手入れするには、一年間に相当の金額が使われている筈だ。間違い無い。

すると、佐村の瞳は一点に集中した。

庭園の隅から、毛瀬法子が現れたのだ。

法子は、錦鯉にエサを与えているようだ。

右手でエサを撒くと、バタつかせながら必死に食べている様子だ。

この時法子は、和服姿ではなく、白のブラウスと黒のタイトスカートと割りとラフな

スタイルであった。

やはり金持ちのお嬢様らしく、法子のまわりには気品が漂っている。

そして、大人の色気も持ち合わせ、そんな法子を見ているとひたすら美しいと思った。

男には男の色気があり、女には女の色気がある、これがフェロモンだろうか。













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