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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

法子には神の慈愛によって、女神のように見えた。

佐村には、見えないものが見えるような気がした。

咄嗟に法子が佐村に気付き、頭を下げた。

ニッコリと微笑みながら、佐村の傍に来ると。

[奥様、お連れしました]

運転手が、そう言うと。

[ご苦労様、下がっていいわ]

運転手が会釈をして、車の所に戻って行った。

[よく、きて下さいました]

[大事な話と言うのは?]

[どうしても会って欲しい人なんですが、その人は私の義兄なんです。

詳しい話は中で----]

法子が自宅の方に歩き出すと、佐村も後をついて歩いた。

二人が玄関から入ると、土足のままリビングルームへと案内された。

真っ直ぐな通路を10メートル程歩くと、左側にリビングルームの入口があって

中に入ると中央にテーブルとソファが置いてある。

ソファには、初老の男性と30代の若い女性が座っていた。

佐村が一礼したところ、初老の男性が立ち上がり法子が。

[私の義兄の、盛達三です]

[私が、盛不動産の取締役社長、盛達三と言います]

そう言いながら、達三氏が右手を出した。

[初めまして]

佐村と社長が、握手をした。

[こちらが、秘書の真理恵君です]

社長が紹介すると、彼女が深くお辞儀をした。

3人がソファに座ると、そっと法子がリビングルームから出て行った。

達三氏が先に、口を開いた。

[実は、妻由紀子の事で相談なんですが、妻が現在ある宗教団体に夢中になっていまして

その団体に、多額の現金を寄付しているらしいんです。既に、1億円以上を納めて

いるのです]

[その、宗教団体と言うのは?]

[インターネット宗教、教団アノニマスの明石海人教祖なんですよ]

[明石海人!]

佐村が、怪訝な顔をした。

[ネットでのホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブック等の通信だけで

信仰する宗教なんですが、妻もパソコンを買ってネットをしても良いのですが、

お金をどんどん寄付されますと会社が潰れてしまいます。そこで、法子から愛留を

連れ戻すようにと依頼されているかと思いますが、もう1つ私の依頼も聞いて欲しいと。

そこで佐村さんのお力で、由紀子を教団アノニマスから引き離していただきたい。

報酬は幾らでも払いますので、是非ともお願いしたい]

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