テキストサイズ

教団 アノニマス

第1章 罪と罰

社長は、明らかな会社の危機感を持っていた。

それに、押される形になった。

[分かりました、引き受けましょう。でも何故、由紀子さんが教団アノニマスに

入れあげているのでしょうか?]

[お恥ずかしい話しですが、由紀子は教祖に惚れているのです。噂では、妻と教祖が

いかがわしい行為をしていると世間の評判になって、私も社長と言う肩書きながら、

非常に肩身の狭い思いをしておりまして、明日明石教祖による講演会があり、必ず

妻も行きますので、妻を説得して欲しいのですが]

[奥様に、話してみます]

達三が、立ち上がり。

[私はまだこれから会社に戻って、会議がありますのでこれで失礼します]

達三がそう言うと、法子がやってきた。

[義兄さん、もう帰るのですか?]

[私も忙しくてね、これから真理君とのマンツーマンの会議だよ。ハッハッ]

達三が笑いながら、右手で真理恵を抱き寄せた。

[失礼するよ]

社長がそう言うと、真理も一礼して二人一緒に部屋から出て行った。

佐村も、一礼して見送った。

[真理恵----]

佐村にも、不思議に思えた。

そこに法子が戻って来ると、法子がもつトレイにはワインボトルとグラス二個が

乗っている。

佐村が、ワインボトルを見て驚いた。

[ロ、ロマネコンティ!]

ニッコリ笑った法子が、ワインをグラスに注いだ。

[毛瀬さん!高級ワインいいのですか?一本百万円するのでは]

[いいんですよ、これは義兄さんに出す積もりだったんですけど、義兄さんは


秘書にデレデレで目もくれずに帰りましたので]

ワインが大好きな佐村は、心の中で大変喜んだ。

ワインとコーヒーには、目がなかったのだ。

[毛瀬さん、本当にいいのですか?]

[どうぞ、佐村さんの大好きなワインを用意しました。

これは、百五十万円で買ったものですの]

つい顔が綻んだ佐村は、一気にロマネコンティを飲み干した。

生まれて初めて高級ワインを飲んだ、心からの無情の喜びが湧いて来たのだ。

長生きして、良かった。

佐村は、感謝の気持ちで一杯だった。

その味は、生涯記憶に残るものだった。

ほんのりと、酔いが廻った所で。

[失礼ですが、秘書の真理恵さんと真理麗佳さんとの関係をご存じですか?]

突然、法子の顔が曇った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ