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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

[お恥ずかしい話しですが、真理恵さんは真理麗佳さんの妹なんです。

義兄さんは性懲りもなく、今度は妹に手を出したのです]

[由紀子さんは、ご存じですか?]

佐村はワインの酔いから、覚めるような気がした。

[ええ、知っています。愛人の子供を設け、今度はその妹に手を出す。

もう、どうしようも無い義兄なんです。社長と周りからちやほやされると、

人間だらしなくなってしまうものですね]

法子が呆れたように言ったのだが、冗談では済まされない問題である。

由紀子さんの説得は、非常に難しいと思った。

[社長に対する、由紀子さんの罰でしょうか]

佐村が、力なく言った。

[そうだと思います。姉さんの復讐かと]

佐村も法子も、由紀子が可哀想になってきた。

[佐村さんは、奥様はいらっしゃるの?]

突然、法子が踵を返すように質問をしてきたのだ。

[いえ、私の妻は10年前に死にました。自宅にいた時に強盗に襲われ、子供と共に

殺されていました]

俯いたまま、黙ってしまった。

[ご免なさい、悪い事を聞いてしまって。気分を害さないで下さいね、決して

悪気はなかったの]

思わず、法子が弁明した。

[余り、気になさらないで下さい]

佐村は、少し苦笑した。

[お子さんは、おいくつでしたの?]

[まだ、5歳でした]

[まあ、可愛いい盛りですのに、お気の毒な。

それで、犯人は捕まったの?]

佐村が首を、横に振った。

[けど、どうしてそんな事になったのかしら]

[10年前私は、ベンチャー企業を立ち上げたばかりで、自分の会社を軌道に乗せる事に

必死でした。毎日徹夜続きで中々自宅に帰る事が出来ませんでしたが、努力の甲斐あって

やっと会社が軌道に乗りました。でもその矢先、事件は起こりました。

深夜自宅に帰宅すると、妻子は血まみれになってフロアに倒れていました。

私はショックの余り、どうする事も出来ず泣き叫ぶだけでした。

折角軌道に乗せた会社を友人に二束三文で売り、そのお金で毎日酒を呑んでは

酔い潰れていました。一体自分は何をやって来たのか、妻の君香と息子の健斗を

守ってやれなかった!毎日自分を、責めてばかりいました]



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