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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

[失礼ですが、被害額はいか程で?]

佐村が、恐る恐る訊くと。

[3億5千万円です]

[かなりの額ですね]

法子が、暗い顔で頷いた。

[湯田は5年程刑務所に入っていましたが、義兄は社長として民事裁判により全額賠償請求を

起こしました。3億5千万円の返還を迫りましたが、湯田にそれが出来る筈もありません。

その時、義兄の親友であった伊佐屋豊社長が返還に応じてくれたのです]

[伊佐屋豊社長と、言いますと?]

[都内に幾つものチェーン店を持つ、総資産5千億の指折り社長で、賠償金全額を

立て替えてくれたのです。

その上、湯田を店長として自分の会社に雇って下さいました]

[何故、社長が湯田さんの莫大な賠償金を貸してくれたのでしょうか?]

思わず佐村が、首を捻った。

[湯田が社長賞を二度授賞するなど、義兄も伊佐屋社長に自慢していたので、

伊佐屋社長も、能力の高い社員を欲しがったのだと思います。

社長なりの、ヘッドハンティングだったんですね]

法子も湯田と喧嘩別れをした訳ではなかったので、いつでも復縁を考えていた。

[湯田さんの店は、なんと?]

[渋谷の雑居ビルに、ポルノショップ❨ドラッグ❩という店の看板がありますわ!]

[雇われ店長という事で、でも一番可哀想なのは盛愛留さんですね。

みんなから、厄介者扱いされて]

[愛留には、可哀想な事をしたと思います]

法子も今まで悩んできたが、愛留をこれ以上姉夫婦に任せる訳にはいかないと考え、

法子の決断を佐村に話す事にした。

[愛留を私達夫婦の養子にしようかと、それで佐村さんを今日およびした次第で。

お願いですが、湯田と会って私との復縁話しを伝えて下さい。

私からは、どうしても言いにくいので]

佐村も、メモ帳のペンを止めて。

[お安い御用ですよ、湯田さんに会って話して見ましょう]

やっと法子が、安堵の表情になり、笑みも零れた。

[恩に着ます]

法子が、ソファに座ったまま頭を下げた。

[つい長話になってしまって、もう一本ワインを持って来ますね。

テレビでも、見ていて下さいね]

法子が立ち上がり、テレビのスイッチを点けた。






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