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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

新宿駅では午後10時を過ぎても人通りは多く、往来客でごった返している。

駅の西口タクシー乗り場に、一人の少女が立っている。

髪の毛は肩まで伸びて、上にはダウンジャケット下はレギンスにチェックのスカートで

靴は、スニーカーを履いている。

春の4月と言っても、まだまだ寒い。

外に立って風に吹かれていると、身体の芯まで冷えてくる。

その少女の所に、一台の黒色のベンツが停まった。

運転席の窓が下りると、若い男が顔だけを出した。

「盛愛留さんですね、社長の命令で迎えに来ました」

男がそう言うと、後部座席のドアが開き、愛留が乗りこんだ。

車の中はとても広く、快適である。

あたたかいせいか、男は寒い夜というのにタンクトップ一枚だ。

よほど鍛えているのか、肩や上腕二頭筋は筋肉が盛り上がっている。

ボディも、逆三角形だ。

夜というのにサングラスを掛け、前を向いたまま愛留に話し掛けた。

「僕は、伊佐屋豊社長の秘書をしている、三上直也と言います。現在社長は、

韓国旅行から帰国しておりますので、もう暫くお待ち下さい」

愛留も少し、緊張気味だ。

「社長は私の事、ご存知でしょうか?」

「はい、教祖から全てを聞いておりまして、愛留さんが副代表である事もご存知です」

それを聞いた愛留は、少し安堵した。

愛留は、明日正式に教団アノニマスの副代表に任命される。

脳裏に過去の出来事が、鮮明に蘇ってきていた。

それは二年前、愛留が中学3年の時に起こった。

学校の放課後、一人で校内の図書室にいた。

愛留以外、図書室には誰も居なかった。

読んでいる本は、キリスト教の新約聖書である。

この本を読んでいると、不思議と気持ちが落ち着いた。

マタイの福音書、マルコの福音書、ルカの福音書、ヨハネの福音書。

愛留は、この4つの福音書を好んで読んでいた。

聖書を読むきっかけは、小学4年の時にイジメにあったからだった。

ある日、学級委員に立候補した愛留だったが、その途端同級生から。

「母親は由紀子では無く、二号のお妾さんだ!」

ただそれだけで、噂は広がっていた。

同級生から、からかわれたり無視されたり、様々な嫌がらせを受けていたのだ。





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