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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

「お母さんが違うから、私は親戚中を盥回しになったのだわ」

私は、日影の子。何処に行っても厄介者扱いされるだけ……。

学校は辛かったのだが、それでも余り学校を休む事はなかった。

しかし、ある日毎日続く苛めに疲れ果て、自分でも気づかぬうちに川へと来ていた。

普段余りこの道は通らなかったが、愛留にもその理由は分からない。

川幅30メートル程で、深さは3メートル以上あった。

昨夜の大雨で、水が増水して流れが速くなっている。

愛留の心の中に。

「これ以上辛い思いをする位なら、いっそこの川に飛び込んで」

目の前に、車が一台通れる程の橋がある。

木造の橋で、かなり古そうだ。

「あそこから飛び込めば、楽になれる……」

橋の真ん中まで進み、下の川の流れを見下ろす愛留。

橋の欄干に片足を掛けた。

とその時ふいに、後ろから声を掛けられた。

愛留が振り向くと、年老いたお婆さんだった。

既に90歳を越えて見え、背中が曲り顔の皺も深かった。お婆さんは、愛留の瞳を見詰めて。

「マリアよ、まだその時ではありません。マグダラのマリアよ」

「いえ、私はマリアではありません。愛留です」

「いえ、貴方こそマリアです」

驚く愛留だったが、このお婆さんはおかしいのではと真剣に考えた。

たが不思議なのは、どう見ても老人なのだが声だけは、若々しいのだ。

「貴方には、重大な使命があります。キリストを助けなさい。この聖書を読めば救われるでしょう」

お婆さんから1冊の聖書を受け取ると、お婆さんは白い光に包まれ消滅した。

怖くなった愛留が、聖書を持って駆け足で家に帰った。

貰った聖書は、旧約聖書と新約聖書が1冊になった本だった。

その日から愛留は、夢中になって読んだ。

すると、不思議な事に徐々に苛めは減り、余り辛い思いはしなくなっていた。

そのうち、友達まで出来る様になった。だが、愛留が小学6年になったある日、決定的な事件が起きた。

学校帰りに、5人程の同級生男子が愛留の前に立ちはだかった。

男子達は皆、木の棒と石コロを持っている。

「お前何故、一人だけ教室の中で聖書を読んでいるんだよ。高尚な本ばかり読みやがって、そんなに先生に褒められたいのかよ。

生意気なんだよ!!」

今にも、男子5人が愛留に襲いかかろうとした。








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