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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

「その、聖書を寄越せよ!」

「聖書を、どうするの?」

思わず愛留は、聖書を後ろに隠した。

「燃やすんだよ、灰にしてやる!」

「待ちなさい!君達」

後ろから声がしたと同時に、その大人は白い光に包まれて現れた。

「なんだよ、叔父さんは?」

一人の少年がそう言うと、男は子供達を見下ろしながら正面に立った。

「この女の子が、何か悪い事をしたのか?」

「こいつは、僕達を小馬鹿にしたんです」

もう一人の子供が、言い放った。

男の瞳は、非常に澄んでいた。

「君達も、悪い事をしていないか?悪い事をしていなければ、この子に石を投げなさい。木の棒でたたきなさい」

男がそう言うと、右手に軽石を持ちアスファルトの上に文字を書き出した。

(僕は、小学6年生になった今もオネショをして、お母さんに叱られています)

(僕は、コンビニでマンガの本を万引きしました)

(僕は、母さんの財布から一万円札を黙って抜きました)

(僕は、石を投げて学校の窓ガラスを割ってしまいました)

(僕は、空き家にしのび込んで火遊びをしているうち、火事になリました)

男がそう書くと、それを見ていた少年達がチッ!と舌打ちしながら地面に思い切りたたき付けた。

そのまま少年達は、何処かに走り去った。

男が書いた事は、全て事実だったのだ。隠していた事が全て書かれてしまい、痛たまれなくなってしまったのだ。

「叔父さん、ありがとう」

愛留には目の前の男が、普通の人間とは違っている事に気がついた。

「マグダラのマリアよ、マグダラのマリアよ!私を忘れたか、キリストだ。もうすぐ私は、降臨する。また私の子を産んでおくれ。

エジプトの地で」

この人が、キリストなのか。愛留は、自分自身の宿命を感じた。

「いつも、傍にいるよ」

イエスがふたたび、白い光に包まれて消えて行った。

それから、愛留が15歳の中学3年になったある日。学校の図書室で聖書を読んでいると突然、空中から聖母マリアが現れた。




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