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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

都内渋谷の雑居ビル群の一角に、7階建てのビルがある。

その二階には、ポルノショップ、ドラッグと書かれた看板が掛けられている。

そのビルの前に1台のタクシーが停まり、佐村が下りてきた。

そして、一階の入り口から入って行った。

建物は相当古く、7階建てなのにエレベーターが無い。

消防法では5階以上の建物には、必ずエレベータを設置しなければならない法律がある。

築40年以上は経っているのではないだろうか、取り壊しは近い筈だと思った。

階段は狭く薄暗い、とても安全とは思えない。

佐村が二階まで上がると、ドアにドラッグと書かれた張り紙が無造作に貼り付けてある。

そのドアの横には、脱法ハーブの自販機が設置されていた。

ドアに近づくと、自動で横に開いた。

中に入ると棚が幾つか置いてあり、その棚の中には無数のDVDが収められていた。

その数は、何千何万とありそうだ。

壁、天井と共に大きなポスターが貼られている。

どれも若い女性の裸ばかりで、両足はM字型に開いていて股間は丸見えなのだが、肝心な場所にはモザイクが掛けられている。

しかし、アダルトビデオも20年前と比べるとずいぶんと変わった様な気がする。

天井と壁一面に綺麗で可愛いい女の子が、佐村を見て微笑んでいるようだ。

ゆっくりと奥に進むとカウンターがあり、一人の初老の男性が立っている。

その男性は、さっきからずっと伝票の整理をしている。

「あのう、すいません」

佐村が控えめに声を掛けると、驚いた様子で顔を上げた。

「失礼、いらっしゃい」

と乾いた声で、呟いた。

「湯田幸吉さんでしょうか?わたくし、興信所の佐村と言います。少しの時間を」

湯田が壁にかかっている時計を見ると、針は午前一時を差していた。

「もう、客は来ないだろうからいいですよ。うちは二時で閉店ですからそれまでうかがいましょう」

その時だった。佐村が振り向くと、突然1人の客が入って来たのだ。



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