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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

[その盛愛留さんが、家出をしたのはいつ頃でしょうか?]

[先週の、金曜日からだと思います]

[家出来をした原因は、何だと思いますか?]

法子は神妙な顔になり、一呼吸置いて。

[実は、盛愛留という娘は日影の子なんです。私の姉は盛由紀子といって盛達三の妻ですが、夫が愛人の真理麗佳に産ませた子供なのです。

長年、夫婦には子が出来ませんでした。それで夫は、愛人との間に子供を作りました。達三氏は由紀子と離婚が出来ず、あろうことか

真理麗佳が出産したばかりの子を、社長のデスクの上に置いたまま失踪してしまったのです]

佐村が、何かを思い出した。

[盛不動産---。盛達三社長---。という事はあの盛財閥の---]

佐村が、驚愕した。

[しかし何故、盛一族の方が零細探偵事務所に来られたのでしょうか?]

盛財閥は、戦前まで旧華族として有名であった。盛一族は一時皇族とも関係があったのだが、戦後になりアメリカの進駐軍GHQの方策により 

財閥は解体させられた上、財産を全て没収されたのであった。

しかし、盛財閥はなくなったが都内の土地だけは残った。

当時の一族の長、盛庄三衛門とヨネ夫婦が新たに盛不動産という会社を設立し、都内に幾つもの貸ビルを建設した。

すると、ビルには沢山の店舗が入り、レストラン、スナック、キャバレーなどでどの店舗も繁盛した。

日本はいつの間にか、高度経済成長にまで発展していたのだ。

大幅な資産を増やした一族は、ハワイやオーストラリアに別荘を持つまでになった。

いよいよ日本は、バブル経済にまで登り詰めたが、あえなく崩壊により好景気に陰りが差しはじめていた。

それから、20年以上が経過してしまった。

法子の顔が曇った。

[この事は、内々に納めたいものですから。大きな興信所では、すぐマスコミに知られてしまいますのでこれ以上笑い者には----。

それで、佐村さんに依頼したいのは、愛留を私の自宅に連れ戻して欲しいのです]

[失礼ですが、子供を引き渡すのは由紀子さんの方では?]

[確かにそうですが、姉は愛留を物凄く嫌っていましてそれは仕方のない事だと思います。夫が勝手に作った子供ですので、姉はショックで

夫を殺そうとしたのです。警官がすぐに来て騒ぎは治まりましたが、それ以来子供は親戚中を盥回しになってしまったのです]



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