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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

「盛社長からの依頼で、奥様の由紀子さんに会いに来たんだ」

ふと、エレベーターの方を観ると、一人の婦人が目に留まった。

和服姿で、歩き方が法子に似ている。

「ちょっと、此処で待ってて!」

婦人がエレベーターに乗った所を見計らい、佐村も向かった。

婦人が宇宙の間の楽屋に着くと、中に通された。

佐村が、その後にやって来た。

「あのう、明石教祖に逢わせてもらえませんか?」

スタッフに声を掛けたのが、アポを取っていなかったので会う事は出来ず、また一階に戻る事にした。

楽屋の中では、明石教祖と幹部が寛いでいた。

「先生、おめでとうございます。とうとう、この日が来ましたね 」

「由紀子さん、ありがとうございます。由紀子さんが真っ先にスポンサーをかって出たお陰で、大講演会を開催する事が出来ました」

「ところで、愛留は何処にいますか?」

「終了直後に、帰りました」

「先生が、愛留を引き受けてくれたお陰で助かりました。私には、手が負えなくて」

バッグの中から、封筒を取り出して教祖に渡した。

「養育費と言っては何ですが、今日はこれで愛留をお願いします」

「愛留君は、良い子ですよ」

「私にとっちゃ、疫病神ですよ。フッフッ」

由紀子は深々と頭を下げ、楽屋から出て行った。

由紀子はどうしても、愛留を好きになれなかったのだ。その為、愛留が教団に出家する際、

喜んで教祖にお金を渡したのである。

教祖が封筒の中身を見ると、百万円の束が入っていた。

一階で、3人が待っていると、由紀子がエレベーターから降りて来た。

「来た!」

佐村が呟くと、由紀子のあとを追い掛けた。

ホテルの前の、歩道で。

「すいません」

由紀子が、振り向いて止まった。

やはり顔立ちは、法子と似ている。

「話を伺いたいのですが、少しいいですか?」

「ええ、まあ」

由紀子の表情は、固かった。

「ご主人の達三さんから依頼を受けまして、ある宗教団体に多額の寄付金をしているそうですが」

由紀子の顔が、みるみるムッとした。

「貴方には、関係の無い事でしょ!」

「その寄付金が、ご主人の負担になって」

「大きなお世話ですよ、主人が何を言ったか分かりませんが!」



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