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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

横浜市内にある佐村の探偵事務所の中で、美樹や里沙と3人でテーブルを囲み、

ソファに座っている。

「湯田さんが横領した3億5千万円のうち、全額を渡していなかった。

それで、残金の隠し場所を訊きにきたのでは?」

美樹の勘は、鋭かった。

「そうかもしれない、士門刑事から訊いたのだが、麗佳が貢いでいた男は明石教祖だ」

「教祖?」

美樹が、絶句した。

「教祖の前職は医師だったが、貢がせた金で病院を開業しながら失踪している。

何故、明石が医師から宗教家になったのか?」

「里沙さんは、何か教祖についてご存知でしょうか?」

佐村が、里沙に訊いた。

「私は、丸陳流太さんから誘われて入信しましたが、幹部の間に噂があって

教祖は人を殺めていると‥…」

「教祖は、誰を?」

「親子と言っていました」

「まさか!」

佐村に衝撃が走った、全身が凍りつくように。

私の妻子を殺害したのは、明石教祖!

これで、何故教祖が医師から宗教家になったのか初めて理解出来た。

「これが、教祖にとっての罪の償いだろうが、そうはいかないぞ明石学!」

どんな事をしてでも、司法で裁いてやる!

心に誓う、佐村だった。

「あのう、おトイレを借りても?」

里沙が、ニッコリ笑った。

「どうぞ、奥に在ります」

里沙がテーブルの上にスマホを置き、トイレに向かった。

ふと佐村が、そのスマホを観て、首を傾げた。

スマホを手に持ち、ジロジロ眺めた。

そこに里沙が、戻って来た。

「このスマホ、どうしました?」

唐突に、里沙に訊いてみた。

「これは、幹部リーダーの丸陳流太さんから頂いた物ですが」

スマホのアプリを、見ていた佐村は。

「このスマホには、遠隔操作アプリがインストールされています。

恐らく、前もってプリインストールされたものでしょう」

「これは、どういう事でしょうか?」

里沙は、一気に青ざめた。 

「全て、盗聴盗撮されています。既に此処の場所も」

「データが、盗まれていると?」

佐村が、静かにゆっくりと頷いた。

その時だった、玄関をノックする音が室内に響いた。








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