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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

美樹と里沙の二人が目を覚ますと、知らない建物の中にいる事に気がついた。

だが、室内の半分を鉄格子で仕切られている。

鉄格子の向こうにはドアがあり、恐らく出入り口の扉と思われる。

周りを見渡しても、何も無い。

「アルコールの匂い、消毒液のような」

「きっと此処は病院なんだわ、今は使われていない廃病院かも?」

美樹がよく見ると、壁は所々コンクリートが剥げ落ちている。

窓は無く、昼間だと言うのに薄暗い。

二人とも両手両足が縛られていて、身動きが出来ない。

時間も分からず、何処の廃病院かも分からない。

ただ、時間だけが過ぎていく。

その時突然、二人とも真っ白な光に包まれた。

室内の中が光で鮮明に映し出されて、その中から明石教祖が現れた。

美樹と里沙は、驚愕した。

教祖が里沙を見ると、傍に近づき催眠術を掛け始めた。

里沙は蛇に睨まれた蛙のようになり、目を見開いたまま固まってしまった。

掌を里沙の顔に翳しながら、何やらブツブツと呟いている。

それが数分程続いただろうか、教祖が里沙の左腕を掴むと、里沙が頷いた。

その直後、教祖の姿は消滅したのだ。

驚きの余り困惑した美樹だったが、里沙はその場に倒れ込んだ。

「里沙!里沙!」

何度も呼んだが、返事は無い。

それに呼応するかの様に、二人の男達が入って来た。

男達は、白いネクタイに黒のスーツを着ている。

鉄格子の鍵を開け、一人の男が里沙を抱きかかえて肩に載せたまま部屋から

出ていってしまった。

美樹はどうする事も出来ず、案ずるしかなかった。




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