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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

麗佳は佐村達を見るなり、俯いた。

「麗佳さん、私を覚えていますか?あの日、湯田さんのアパートの前で

声を掛けた男ですが、貴方は逃げました。

湯田さんとどういう話しがあったのでしょうか?」

麗佳は俯き、黙ったままだ。

「貴方が、湯田さんを殺したのではありませんか?」

咄嗟に麗佳が顔を上げて、重い口を開いた。

「違います!ただ・・・」

「ただ、とは何ですか?

貴方が秘書をしていた頃、盛社長と湯田さんから貢いで貰っていた。

しかし、子供が出来ると社長のデスクの上に置いたまま失踪してしまったのですね。

お子さんが可哀想だとは、思わなかったのでしょうか?」

佐村の言葉に麗佳の目頭が厚くなり、大粒の涙が零れていた。

「全部、お話いたします。

今考えると、愛留を社長のデスクの上に置いたまま、実家に帰った

とんでもない母親です。

決して私は1日も、愛留の事を思わなかった日はありません。信じて下さい」

麗佳の瞳から止め処も無く、涙が流れていた。

私は、大学時代からの先輩と付き合っていました。それは秘書時代も続きました。

実は、愛留は盛社長の子供ではありません」

「何ですって!それでは何故、子供を捨てて逃げたのですか?」

驚きを隠せない、佐村だった。

「私も彼も、経済力がありませんでした。

私は、彼に内緒で愛留を出産して、社長の子供にしたのです。

当時、彼や社長とも肉体関係がありましたが、社長は誰の子供か全く疑いませんでした」

「彼は、何をしていましたか?」

「医者の卵といいますか、インターンでしたので全くの無収入だったのです」

「失礼ですが、彼の名前は・・・」

「明石学と言います」

教団アノニマスの教祖!

「明石学が何故、医師から宗教家に転身したかは判りませんか?」

「詳しくは分かりませんが、10年前おかしな事がありました」

「10年前!」

佐村が眉間に皺を寄せながら、身を乗り出して聞いた。



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