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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

佐村は五反田商店街からタクシーに乗り込み、大宮方面に向かっていた。

「大宮付近に、昔からの廃病院はありませんか?」

運転手に、訊いてみると。

「埼玉県内に幾つかありますが、一番有名なのは明石クリニックと言う廃病院ですね」

「それは、いつから有りますか?」

「恐らく10年前だと思いますが、開業した途端に病院長が失踪してしまって。

当時、催眠療法の医師が、催眠術で治療するという事で、開業当初はテレビ局の

取材も来ていましたから」

「何故、院長が失踪したかは?」

「今から10年前に東京で母子殺人事件がありましたが、その事件直後に行方不明になって

しまったので、事件と関係があるのではと噂になっていました」

やはりそうだったのか、家族を殺したのは明石教祖!

医師から宗教家へ・・・あんたにとっては禊ぎかもしれないが、

俺は絶対許さない!絶対捕まえてやる!!

佐村は心の中で、そう誓ったのだった。

その時、何気なく運転手がカーラジオをつけた。

(本日午前11時頃、目白区のマンションに住む、盛不動産社長の盛達三夫婦と

飲食店店員の直巳里沙さんが、倒れているのを発見しました。

3人共、拳銃で撃たれており即死でした。

二人暮らしの盛夫妻の自宅に何故、直巳里沙さんが死亡していたのか

警察では詳しい関連を調べています。

盛達三社長は、都内を中心に幅広く事業を展開していて、

バブル期には不動産王と呼ばれていました。では、次のニュース」

「何だって、里沙さんが!」

思わず佐村が、驚愕と同時に絶句した。

全身から、血の気が引いて行くのが分かった。

「どうして、里沙さんが盛社長の自宅に?間違いではあるまいか」

大変な事件になってしまった、なんとしてでも美樹を助けねば!

事の重大さを、ひしひしと感じていた。

「お客さん、大丈夫ですか?かなり顔色が」

運転手がバックミラーを見ながら、問いかけて来た。

「いえ、何でも有りません」

気持ちを落ち着かせるように、窓から景色を観ていた。



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