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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

品川にある15階建てビルの最上階に、教団アノニマス本部がある。

この本部で、教祖と12人の幹部達が雑事をこなしている。

幹部リーダーの丸陳流太が、幹部ルームで電話の応対をしている。

「大口スポンサーの松戸様でしょうか、はい、はい、それは困りますが、

もう一度考え直して・・・そうですか」

力無く、流太は電話を切った。

他の幹部達も同様に、落胆しながら受話器を置いた。

幹部達は丸陳流太の顔色を観ながら、首を横に振った。

流太は大きな溜め息をつきながら席を立ち、隣りにある教祖様室へと移動した。

教祖様室は明石教祖専用の部屋で、いつも薄暗く部屋の真ん中には玉座があり、

その玉座の上で、教祖が瞑想している。

「たつた今大口スポンサーの方々から連絡があり、全てキャンセルとの事で」

「それは、何故でしょうか?」

教祖が、目を閉じたまま訊いた。

「今度の盛社長夫婦殺害事件で、教団アノニマスは暴力団と抗争との噂がある為です?

このままでは、あっという間に教団資金が枯渇してしまいます」

教祖と丸陳流太が沈黙を保っていると、副代表愛留が入ってきた。

「副代表、大変な事態になりました。教団に援助をする人間は誰もいません!」

「案ずる事はありません、盛夫妻はなるべくしてなったのです」

「これから教団は、どうしたら?」

丸陳流太は、悲壮感に満ちていた。

「只今、こちらに助けて下さる方が来ています」

愛留が話した途端、教祖様室に一人の男が入ってきた。

士門刑事だった。

「丸陳流太さん、良い話があります。

先日、湯田幸吉と言う男が死にましたが、この男は盛不動産から多額の現金を

横領していました。2億円を何処かに隠したままなのです。

もしも、その隠し場所が分かれば」

「それは、本当ですか?」

流太が目を丸くしながら、驚いた。

「でも、死人に口無しで湯田しか・・・」

士門が、視線を落とした。

「諦める必要はありません、湯田の霊を下ろして場所を聞き出せば」

「しかし、どうやって死者の霊を下ろすのですか?」

丸陳流太が、不安になった。


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