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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

「そうだ!」

男が、大きく頷いた。

「教祖は何故、この病院を捨てて失踪したんですかい?」

「病院を開業して間もない頃、一人の女性が治療を受けに来たんだが、

催眠術を施し始めた途端、錯乱状態になって暴れ出したんだ。

明石と看護士が押さえ込み、鎮静剤を注射したところ患者がショック死を

してしまったんだ。

動揺したんだろう、それは鎮静剤で無く筋弛緩剤だったんだよ。

明石はこの事実を隠蔽する為に、死亡した女を車に乗せて自宅に行き、

そこで強盗が入ったように装ったんだ。

自宅に小さな子供もいたんだが、二人共ナイフで斬り殺したんだ。

その後、明石は女と大阪へ逃亡したと噂を訊いた事がある。

ついでに、新宿のラブホテルで若いカップルが殺されたんだが、

何故だか分かるか?」

もう一人の男が、首を横に振った。

「一緒に患者を押さえつけた看護士の娘が、山本ルミカだ。

ルミカが、横井に喋ったのさ。

横井英人は、ワシらの組の人間だったんだ。

中学生の頃から暴走族に入り、そのうち麻薬の密売人になり、

自分も手を出した為に、闇金から借金してまで薬を手に入れていたのさ。

あとはどうにもならなくなって、借金取りに追いかけられていた時に

ルミカと出会ったんだ。

彼女から真相を聴いた横井が、教祖を揺すって来たのさ。

だから、組長が二人にヒットマンを送ったって訳さ」

ドアの前で息を殺して、訊いていた佐村だったが。

「そうだったのか!俺の妻子、横井とルミカ、直巳里沙を殺害したのは

教祖と丸陳流太」

佐村がその場を離れようと足を上げた時、空き缶を蹴ってしまい大きな音が響いた。

「誰だ!!」

部屋の中から声がした途端、勢いよく男達が出て来た。

一人の男がナイフを持って突進して来ると、ナイフを持った腕を左手で掴み

膝に腕を打ちつけ、その瞬間背負い投げをすると男は背中から落ち

頭を打った為そのまま伸びてしまった。

もう一人の男が懐から拳銃を取り出し、銃口を佐村に向けた。

瞬間、佐村が下に落ちたナイフを素早く拾って男に向け投げた。

男の拳銃を持った右腕に突き刺さり、思わず上に向けて発砲してしまい、

実弾が天井の鉄パイプに当たって、落下した鉄パイプが男を直撃し、

ガンと大きな音がした後、仰向けに倒れた。


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