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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

二人は士門刑事の車に乗り、埼玉県の大宮から都内の池袋を目指した。

社長の自宅では、地下室でワインを飲みながら、高級オーディオ機器で

マーラー作曲、交響曲第9番2長調、第4楽章を聴いていた。

(死を予言した交響曲)

マーラーの音楽が、伊佐屋社長の死を予告するように響いている。

別室では秘書の三上直也が、筋トレをしている。

いつもの日常という時間が流れている筈だったが、突然、玄関のインターホンが鳴った。

三上が、インターホンに出ると。

「宅急便です」

男の、声が聞こえた。

用心深く覗き穴をみると、男が制服姿で立っていて小さな箱を持っている。

三上がドアを開けた途端、男が右手に拳銃を持っていた。

ドアを慌てて閉めようとしたが、左腕と左足で無理やりこじ開けた。

(ズキューン!!)

爆発したような音がした瞬間、三上がその場に崩れ落ちた。

佐村と士門刑事が乗った車が、社長宅前に到着した。

二人が車を降り、玄関のドアノブを持つと鍵は開いていた。

玄関の傍に、三上が頭部から血液が流れ出て仰向けに倒れている。

「しまった、遅かったか!!」

佐村が叫ぶと、士門が急いで地下室へ向かった。

二人が中をみると、伊佐屋社長がソファの上で頭を撃たれて倒れていた。

士門が社長の瞳孔を見て。

「即死ですね」

「誰が、殺ったんでしょうねぇ」

佐村が、怪訝な表情で訊いた。

「三上も社長も一発で仕留めています、恐らく反社会勢力に所属するヒットマンの仕業でしょう」

間もなく、大勢の鑑識が入って来た。

耳を澄ますと、オーディオ機器から第9の第4楽章が微かに聞こえ、そのうち消え入るように曲が終了した。

盛夫婦といい今度は伊佐屋豊社長と秘書、奴らの目的は何なのか!

そこに、一人の巡査長がやって来た。

「毛瀬法子さんという方から電話で、自宅の周りに不気味な人達に囲まれている為、佐村さんに来て欲しいと」

「え!法子さんが」

佐村が驚愕し、士門に事情を話すと。

「急いで、法子さんの自宅に!」

士門刑事の言葉に、佐村が大きく頷いた。

二人は、法子の自宅に奔走した。

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