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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

法子の自宅では、リビングルームのソファに座って寛いでいる。

姉夫婦の葬儀から帰ったばかりで、まだ喪服の着物姿だった。

何故、こんな事になってしまったのか、法子の瞳から大粒の涙が零れていた。

湯田幸吉、盛達三、そして盛由紀子。
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家族が、無くなってしまったのだ。

これ程の、不幸な女がいるだろうか。

失望と言う闇、法子は飲まずにはいられなかった。

呑んでも呑んでも、止め処無く涙が流れた。

(私も、死のうかしら)

そういう思いだけが、込み上げてきていた。

寂しさ詫びしさが、ナイフのように胸に突き刺さる。

初めて、佐村の気持ちが分かるような気がした。

大分酔いが回ったところ、玄関のチャイムが室内に響いた。

足下がふらつきながらも、インターホンの所に行ってボタンを押すと。

「宅急便です」

モニターを観てみると、宅配の制服を着た男が小さな箱を持っている。

法子がドアを開けた途端、男がどっと入って来て法子にスタンガンを押し付けた。

一瞬で気を失った法子が、その場に倒れた。

男が法子をリビングルームまで引きずり、予め用意していたローブで彼女の両手足を縛ったのだ。

すぐ様男が、窓を開けて合図をすると男達3人が、庭にある池の中島を掘り始めた。

一人の持つスコップが。

(コツン!)

と何か固い物に当たった。

男達が急いで掘り起こすと、土の下からジュラルミンケースが出て来た。

スコップで鍵を壊すと、中には2億円の札束がびっしりと詰まっている。

「やったぜ、兄貴!」

男達が、叫んだ。

いきなり一台の車が池の脇に停まると、佐村と士門が降りて来た。

「何をやっているんだ!!」

士門刑事が一喝すると、男達がスコップを上段に構えながら、佐村達に襲いかかって来た。

咄嗟に士門が拳銃を抜き、スコップの先に一発発砲すると実弾が命中し、スコップが弾き飛ばされたのだ。

その途端、男達はスコップを捨てて両手を上げた。

佐村が急いで玄関からリビングルームに行くと、倒れている法子を発見した。

「法子さん!」

大声で、呼びかけると。

「助けて!!」

法子の所に駆け寄ろうとした時だった、背後から後頭部に銃口を突きつけられた。



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