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教団 アノニマス

第1章 罪と罰

どれ程の時間が経ったのだろうか、目を覚ますと何処の居場所か解らない。

天井や壁、床までもが真っ白だ。

頭に痛みが走り、思わず顔が歪んだ。

頭部を右手で触ると、指にうっすらと血液がついている。

「うぅ・・・」

傷の痛みで、佐村が呻いた。

「一体、此処は何処なんだ?」

周りを見渡しながら、そう呟いた。

その時だった!部屋の外から靴音が聞こえて来ると、目の前にある扉が開いた。

入って来たのは、士門刑事だ。

「刑事、此処は?私はどうなったのですか?」

佐村が士門に問うと、士門がニヤリと笑いながら。

「フッフッ、まだ分からないのか?湯田と真理麗佳を殺したのは俺なんだよ!」

佐村は驚きと同時に、顔が強張った。

「俺は丸陳流太とは大学の同期で、明石教祖が盛財閥の総資産を横取りする

計画を聞いて、その話しに乗ったのさ!」

「どうして、湯田さんと真理麗佳さんを?」

佐村も満身創痍であったが、聞いてみると。

「俺と麗佳は、インターネットで出逢って同棲してたんだが、

麗佳から湯田の話を訊き、大金を横取りしようと考えたのさ。

だから麗佳に頼んで訊きに行かせたのだがあっさりと断られ、

俺が行こうとすると、あんたが張ってる。

それで、麗佳に逃げるように指示したのさ。

あんたがアパートを離れた隙に、湯田の部屋にいくと、狸寝入りで俺を馬鹿しやがって!

頭にきたから、背後からあの爺さんに二発の実弾をぶち込んでやったのさ」

「だが何故、真理麗佳まで殺したんだ!」

憤った佐村が、士門芳樹を睨みつけた。

「湯田を殺った事を知った麗佳が、自首を迫って来たからだよ!」

士門が、ニヤリと笑った。

「士門芳樹!お前は最低な刑事だな、守銭奴にまで落ちぶれたか!

お前に、刑事としての誇りはないのか!!」

一喝すると、士門が鬼の形相に変化した。

「死ね!この野郎!!」

銃口を佐村の頭部に向け、引き金に指を掛けたその時、金の子牛像が現れた。

突然の事で士門が怯んだ瞬間、室内だというのに稲光が士門に直撃し、

一瞬で焼き焦げてしまった。

士門の全身は真っ黒になっていて、所々煙りが出ている。

それはあたかも、羊の丸焼きのようであった。

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