完璧少女の苦悩
第1章 そんな私
「梓はここで降りて。駐車場行って適当に停めてくるから。先に受け付けしてな」
「はーい」
そう言って車から降りると、校庭はたくさんの生徒で溢れかえっていた。
笑顔の奥にちらつく、不安。
なんだかドラマのワンシーンみたいだ、と私は思った。
その中にいるであろう友だちを探す。
この時間に、と待ち合わせをしていたからいると思うけど……。
「あっ、あずさー!」
そんなことを考えていると、この喧騒をぶった切るような大声で名前を呼ばれた。
肩までのボブを軽く揺らしながらこちらに向かって来る。
「あいり」
「おはよう、梓! いやー、探したよ」
私の手を握りしっぽを全力で振って来るもんだから思わず笑ってしまう。
ばかだなあ、と。
「ごめん。意外と家から遠くてびびったよ」
「それねー。あれ、梓ママとパパは?」
「2人なら仕事で来れないって。代わりに光汰くんと篤くんが」
それを伝えると、愛利がえっ! と大袈裟に驚いた。
ちなみに、うちのお母さんとお父さんは仕事が忙しいとかで学校の行事にはたいてい来れない。
だから兄ズが行事に来ることがほとんどだ。