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ぜんぶ二人ではじめて

第10章 ドキドキの夏休み

あれ?なんか市川さん……不機嫌?

気のせい?

「どっちが良い?」

と、昌樹。

「ロングボード!」

と、彩月。

「七海ちゃん!イルカで良い?」

「うん。」

彩月の質問に精一杯笑って答えてるけど……やっぱ……

「海、行くか!」

「うん!」

元気よく答える彩月。

「市川さん、行こう?」

誘ってみたものの…

「うん……」

不機嫌そう。

市川さんの謎の不機嫌をよそに、走り始めた彩月と昌樹。

「後から行く。先に行ってて。」

二人に伝えた。

「はいよー!」

走りながら二人が答えた。

俺は市川さんに、

「疲れた?元気ない?」

聞いてみる。

「ううん!元気だよ。行こう?」

なんか、雰囲気がさっきと違うんだよな。

「…もしかして怒ってる?」

「……怒って……る。」

おっと!素直だな。

「なんで?」

「だって。逆ナンされて笑ってるんだもん。」

フイッとそっぽを向く。その怒った顔がすげぇ、可愛い。

「悪かったよ。人生初の逆ナンだったからさ。でも……俺が一緒にいたい人、市川さんだけだから。」

俺も素直に伝える。

「一緒に海、行こう?」

見つめながら誘ってみる。

俯いてた市川さんが少し、こっちを向いた。

「……もう、先に行かないで?」

「ん?」

「一緒にいてくれるんでしょ?そばに……」

ドキン!ドキドキ……ドキドキ……

「あぁ。一人にしないよ。……水着、めちゃくちゃ似合ってるよ。」

恥ずかしくて、直視できないけど、もっと言いたいことはあるけど、

「…一人占めしたい…」

ほぼ告白だなー、これ。

でも、言わずにはいられなくて……

想いが溢れた。

「ありがとう。私も……ヤスくんのこと……一人占めしたい。」

ドキン!ドキン!ドキン!ドキドキ……

やばっ……超可愛い!!!

俺はそんな可愛い顔を誰かに見られてるかもしれないと思って、思わず、市川さんの上着を取って、サッと、頭から被せた。

「なに?」

「そんな可愛い顔、二人きりの時にして。」

「……」

「泳ぎ行くか。」

「……ん。」

やっばい!マジで可愛い!!!キスしたい!!!

ドックンドックン、波打つ鼓動に負けまいと、俺たちは海に向かった。

よしっ!頑張って手を繋ぐ!

今回の目標は手を繋ぐこと!

自分の中でそう決めた。

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