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ぜんぶ二人ではじめて

第10章 ドキドキの夏休み

「ヤスくん……こっち向いてよぉ。」

シャツを軽く引っ張る。

「うるせー。向けねーの。」

「なんでぇ?」

「市川さんがめちゃくちゃ可愛いから。このまま全身にキスしたくなったの!」

「にゃ?」

にゃ?って何だよ。

「何それ?面白い。」

「噛んだだけだよ。」

「いちいち可愛いんだよ。」

肝心なところで噛むかねー……笑

ま、らしいっちゃらしいか。

空気が和む。

「さーて!トイレ!」

そう言って立ち上がり、用を足してきた。

部屋に戻ると、市川さんがトイレに立った。

昌樹と彩月が気まずそうに戻ってきた。

「おかえり。」

二人に気がつき、俺が先に挨拶する。

「あ。もう起きてたんだ。」

と、昌樹。

「ただいま。昨夜は……ごめんね。」

彩月が俯いて話す。

「良いけど……」

二人の雰囲気が変わったのを感じとり、最後までしたな!と、確信した。

「うまくいって良かったな。」

素直に行動できる、受け入れてくれる相手がいること、単純にうらやましいが、めでたいことでもあると思い、そう伝えた。

「え?分かるの?」

昌樹が言う。

「分かるわ。少なくとも彩月の雰囲気が全く違う!」

なんつーか……キレイになった。

照れ方とか、仕草が……一言で言うと、大人になった。

「あ!二人ともおはよ。」

市川さんが戻ってきた。

「七海ちゃん、昨夜はごめんね。」

彩月が謝る。

「ううん。昌樹くんとたくさん一緒にいられて良かったね。」

「ん……」

めちゃくちゃ照れながら俯いて頷く。

可愛いとこあるじゃん、彩月。

「あれ?彩月ちゃん、首、蚊に刺された?」

それってもしかして……

「え?どこ?」

「ここ。痒くない?」

「うん。」

「腫れてはないね。」

昌樹を見ると、俺と目が合った瞬間、反らした。

やっぱりな。

「蚊じゃねーよ。市川さん。それは、大人になったマーク!」

俺が伝えると、

「えっ?大人になるとマークがもらえるの?」

と。

キスマーク知らんのかー?!

昌樹と彩月が、真っ赤になってた。

俺は笑い堪えるのに必死だった。

「ちゃんと教えてね?ヤスくん……」

またあのうるうる瞳だ。

「だから!そーゆーこと言うなって!もう。」

二人きりじゃないのに、可愛い顔、見せるなよ。




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