テキストサイズ

ぜんぶ二人ではじめて

第10章 ドキドキの夏休み

side 泰宏

市川さんが畑仕事の手伝いに深澤さん家に来た。

隣の畑だから、一緒に休憩をとって、

お昼食べたあと、深澤さん家にお邪魔することに。

だからと言って二人きりになれるわけではないだろうけど、それでも良い。

一緒にいたい。

「お邪魔します。」

「どうぞ。」

「ヤスくん、お疲れ様。奥の部屋にどうぞ。」

と言って、深澤さんに案内された。

「あの。市川さんは?」

「七海は今、シャワー浴びてるよ。もう、出ると思うけど。テレビでも見て待っててやって。」

と。

シャワーか……

俺も浴びてきたけど。

通された部屋は市川さんの物っぽいのが置いてある。

ソファー、テーブル、カラーボックス、テレビ……シンプルだけど、猫足になってる、テーブル。

カラーボックスには目隠しのカーテンがあって、その上に鏡とスタンドライトがある。

その鏡とスタンドライトがレトロでお洒落だ。

市川さん家の部屋にある物は、西洋の城って感じだけど、深澤家のこの部屋は明治初期みたいな雰囲気だ。

どちらも可愛い市川さんにはよく似合う。

「七海、わしら町行って買い物してくるよ?」

「はーい。気をつけてねー!」

「何か欲しいもんあるか?」

「うーん。別になーい!」

「分かった。いってくる。」

そう話してる声が聞こえた。

「じゃ、ヤスくん、七海のことよろしくー。」

ドアの向こうで声がした。

待て!二人きり!?

良いのか?

まさかの展開。

カチャ……

扉が開く。

「あ!ヤスくん!!!」

「お邪魔してます。」

思わずかしこまる。

白のTシャツにデニム地のホットパンツ姿!

可愛いー!

「じいちゃんたち、ヤスくん来てるなら教えてくれたって良いのに。ごめんね。めちゃくちゃ部屋着で。」

「全然。むしろそーゆーの見れて嬉しい。」

なんて素直に言ってみる。

はにかみ笑いがまた可愛い。

「おじいちゃんたちのお手伝いしてるのに、うちのまで手伝ってくれて、ありがとう。」

「いいえ。明日もたくさんありそうだね。」

「うん。農家は大変だよね。」

「あぁ。こういう仕事、好きだよ、俺。」

「私も。うちにある桃の木あるでしょ?」

「あぁ。」

「あれね、私と一緒に生まれてくるはずだった、双子の片割れを偲んで植えたんだ。」

「え?双子だったの?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ