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ぜんぶ二人ではじめて

第10章 ドキドキの夏休み

「そうなの。母さん、6人兄弟なんだけど、みんな双子で三組いるんだよ。」

「それもすごいな。」

「うん。私も本当は姉か妹が一緒に生まれてくるはずだったの。でも、途中でお腹の中で死んじゃったんだって。」

「そっか。」

「うん。名前、桃花にしようと思ってたんだって。だから、桃の木を植えたの。私と同い年の桃の木なんだよ。全部。」

「そうなんだ。深澤さん家の桃はさ、本当に甘くて最高だけど、そういう、みんなの愛情がちゃんと伝わってるんだな。」

「ヤスくん……。みんなそう。私にすごく優しくて……ヤスくんも。」

「俺も?」

「うん。海でも、さっきの畑でも、日陰作ってくれるし。」

「バレてた?」

「ううん。昨日、父さんと母さんと七海全然焼けてないって話してて、でもヤスくんは焼けてたなって。もしかしたらヤスくんが常に日陰になってくれてたんじゃないの?って言われて気がついたの。」

見つめる瞳に緊張する。

「市川さん、肌、真っ白だからさ。焼けたら大変だろうと思って。」

この緊張感に負けないように…素直に…なりたい。

「私ばかりみんなに守ってもらってる気がして……私はみんなに何かしてあげられてるのかなって考えちゃうよ。」

「してくれてるよ。」

「本当?」

「あぁ。」

「どんなこと?」

「……そこにいてくれること。それだけで周りが幸せな気持ちになる。頑張れる。……キミは周りに温かさを与えているんだよ。」

ちょっと真面目に答えてみた。

照れはひた隠しにして…

「えっ??」

「心地良い温度。安らげる空間。雰囲気。それら全て……オーラとでも言うのかな?いてくれるだけで、みんなが幸せな気持ちになれるんだよ。」

「私……そんなに立派な感じじゃないよ。」

「気がついてないところもまた、良いんだよ。」

そう言って見つめると優しく微笑んでくれた。

「ありがとう、ヤスくん。」

その笑顔にやっぱ照れる…

生まれてきてくれて、ありがとう。

いつか、伝えたいな。

抱き締めたくなる。

護りたくなる。

強くなれる気がする。

俺は君のために頑張れるよ。

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