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ぜんぶ二人ではじめて

第16章 密着

私は照れて、何も言えなかった。

ヤスくんが手の握りかたを変えてきた。

指と指を絡める、握りかた……

なんだかドキドキする!

「ヤスくん……手、大きいね。」

ドキドキしながら指を絡めた。

「ナナちゃん。」

あ!

ヤスくんが見つめる。

金縛りにかかったみたいに、身動きがとれなくなる。

「ナナちゃん。オレ、足、つったみたい。」

「え?大丈夫?プールから出て座ろう?」

「うん。」

そう言ってプールからやっと出た。

「ちょっと待ってて。」

そう言って、椅子を取りにヤスくんから離れた。

運べそうな椅子!

あ!これで良いかな。

「よいしょ!」

持ち上げると、

「手伝うよ。どこに運ぶの?」

知らない男の人に親切にしてもらった。

「ありがとうございます。でも、大丈夫です!一人で運べます。」

そう言ったのに、

「一人できたの?」

全く話を聞いてくれない。

「一人で来る人はあんまりいないんじゃないですか?」

さっきのナンパの件もあって、私は怖い気持ちはまだ続いていた。

また、別の椅子を持った。

「可愛いね。キミ。中学生?」

もう、無視!

なによ!失礼ね。

「私、彼氏を待たせていますので!失礼します。」

はっきりそう伝え、その人のもとから去ろうとしたら、

グイッ!

腕を捕まれた!

かなりの力。

「なんで、彼氏がいるのに椅子を君が運ぶのさ?普通、男がやるもんだろ。」

やだ!怖い!

「や、やめてください。」

とたんに声が震える。

「気の強い女って、良いね!」

なんでそう捉えるかは分からないけど、とにかく離してほしくて、

「やだ!離して!」

やっぱり男の人、怖い……

抵抗する。

ヤスくんが待ってるのに。

私はとにかく怖い気持ちを押し込めて、手を振り払おうと必死だった。

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