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ぜんぶ二人ではじめて

第22章 新しい景色

私たちは図書室で宿題をした。

外では、野球部とサッカー部が練習をしている。

私がトイレに立って、図書室に戻ろうとした時……

「市川。」

と、後ろから声をかけられた。

「はい?」

振り向くと、晃くんが立っていた。

「晃くん。」

「勉強?」

「うん。晃くんは部活?」

「うん。今、休憩中。少し、話せないか?」

「いいけど……。図書室でヤスくんたち待ってるから。」

「時間はとらせないよ。」

そう言うから、晃くんについていった。

誰もいない教室で、

晃くんが……

「市川……俺さ、お前の親衛隊だって告白したこと、後悔してる。」

「なんで?」

「抜け駆けご法度だからさー。輝が羨ましい。」

「晃くん、輝くんだけ抱き合ったからってそう言ってるの?」

「うん。」

「晃くんだって、強引にしたでしょ。クラブの皆には言わないの?」

「あの時は、皆で告白するかって話になってたんだ。」

「そうだったんだ。」

一度は好きだと思ってた人と二人きり……は、私も少し緊張する。

「市川、今、幸せ?」

「う、うん。」

「ヤスくんと付き合ってるから?」

「そうだね。」

「はぁ……分かった。」

「え?何?」

「何でもないよ。俺は……やっぱ市川のこと……好きだ。」

近づいてくる、晃くん。困らせたいだけなのかな?

心は動かない。

「晃くん。」

晃くんが悲しそうな顔をする。

「市川が幸せなら良いんだ。」

まるで独り言のように、自分に言い聞かせるかのように、そう言った。

「握手だけさせて?」

「?うん。」

差しのべられた手をキュッと握った。

「さんきゅ。ずっと、今のままの市川でいてくれ。」

「?そう簡単に変わらないよ。」

「そっか。なら安心だ。時間とらせて悪かったな。またな。」

そう言って教室から出ていった。

「晃くん。ナナちゃん、見なかった?」

「教室にいるよ。」

廊下ですれ違ったみたい。

「遅いから心配したよ。」

「ゴメンね。晃くんが少し話したいって言うから。」

「なんだったの?」

「市川は今幸せ?とか。握手してくれって。」

「そう。握手した方の手、出して?」

「ん?」

手を出すと、掌にチュッ!手の甲にチュッ!

ボッ!顔が真っ赤になる。

「ヤスくん!ここ、学校だよ。」

「他の男に触られたらすぐ言って?」

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