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ぜんぶ二人ではじめて

第22章 新しい景色

竜一くんが廊下側の壁つたいにある、先生の机の方から出てきた。

「え……どこから見てた?」

ヤスくんが聞く。

「いや……その……『ナナちゃんに夢中なんだよ。』から。」

「そんなピンポイントで言われても分からん。」

「キスは見た。市川のすっげぇぇぇ可愛い照れた顔もッ!」

って、ちょっと興奮気味で言わないでよ。

恥ずかしくて、

「やだ!」

顔を手で覆う。

「写真とか撮ってないよね?」

ヤスくんが聞く。

はっきり言って学校は煩い。

運動部の練習はホイッスルだの、コーチの声だの、加えて今日は合唱部の音も……

シャッター音なんてかき消されるよね。

静かなのは締め切ってエアコンが入ってる図書室と職員室くらい……

「カメラなんて持ってないよ。」

と、竜一くん。

その言葉を、信じるしかない。

「隠し撮りとかしたら、マジで許さないからな。」

「分かったよー。しないよ。」

「さっき見たことは、言わないで?お願い。竜一くん!」

私は懇願の意味を込めて、竜一くんに困った顔で伝えた。

「ファンクラブメンバーにだけなら良い?」

「まぁ、……良いかな。」

「ヤスくん。恥ずかしいよぉ。」

「いや、絶対バレるから。俺が逆の立場だったら、メンバーには喋る。その気持ちは分かるからさ。そのくらい、許してあげようよ?な?」

「……うん……メンバーにだけね?」

「オッケー!じゃ、邪魔者は消えるので、続き、どーぞ。」

そう言って竜一くんは走り去った。



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