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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

時間的には朝練してる人が多い時間。

泰宏くんも、音楽室で自主練習してる。

その音色を横目に、晃くんが、音楽室の隣の準備室に誘導した。

無言で見つめる、晃くん。

「どうしたの?」

やだ。ドキドキしちゃうよ。

「…………今朝……なんでヤスくんと一緒だったの?」

「えっ?……あっ……昨日、傘なかったから、私ん家に自転車置いて帰ったんだよ?」

目線に耐えられず反らしながら伝えた。

この部屋は、町全体が見える、素敵な景色が広がってる部屋。

私は、大好き!

窓の外に目をやる。

「そうだったんだ!教えてくれてありがとう。」

「いいえ。」

そのあとも他愛のない話をしたけど、私は恥ずかしさから、視線を反らしていた。

ねぇ!どうしてドキドキするの?

男の子と二人きりだから?

それともやっぱり、好きだから?

分かんない!

「晃くん、部活、楽しい?」

「うん!」

「そぅ。頑張ってね。」

これで解放される!

と、思ったのに……

「サンキュー。俺、部活頑張れるの、そういう応援のおかげだって最近よく思うんだ。」

と。

話は続く様子。

あ。泰宏くんのフルートが終わった……

片付け始めてる頃かなぁ?

「そろそろ、戻る?」

そう聞くと、

晃くんが、歩み寄ってきて、男の人として意識をした。

「戻りたいの?」

ドキドキする……

距離が近い。目を合わせられない。

「戻る……」

それだけ言って扉に向かおうとした。

ドンッ!

「キャッ!」

私のことを壁を背にして、壁に晃くんが手をつく。
急に距離が近づく!

「えっ?なっ?」

パニックになる。

やだ!どうしよう!

「市川……」

知らない!

こんな声出す晃くん、知らない。

耳元で囁くように声を出す、晃くん。

「ドキドキする?」

また同じ声で聞く。

「や……」

涙目になりそう……

「野球、応援してくれよな。」

「ん……」

視線なんて合わせられなくて、思わず目をぎゅっと閉じた。

「日直、よろしく!」

一度ため息をつきながらそう言って、身体を離した。

そして、

「ホームルームのは俺が行ってくるよ。じゃあな。」

そう言って走って行った。

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