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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

「市川、日直ー。手伝って?」

ハッ!

晃くんに呼ばれて振り向く。我に返った。

「う、うん。」

どういうことなの?

輝くん?私のことを好きなの?

告白されたわけではないけど、ドキドキして、また混乱した。

竜一くんの切なそうな表情も…心臓の音が変わった気がした。ドキドキとは少し違うような…?

今日の1限は自習。

先生から頼まれたプリントを配る。

進路についての内容だった。

もう?

私は特に……ここでとれる資格をとっておこうと思ってるくらいだから、そんなに書くこともなくて……すぐに終わった。

他の人も同じで、すぐにワイワイガヤガヤ……

私は音楽室に行って、自主練習をすることにした。

個人レッスン室は昼間は空いてることがほとんど。

朝からいろいろドキドキしたから、ぜーんぶを洗い流したかった。

一人でフルートを吹いてる時間が好き。

一通り吹き終わると、ボーッとした。

やっぱり、ドキドキの正体が分からないや。

私は思い出していた。

誰にドキドキしたのか?

いつドキドキしたのか?

できるだけ詳しく思い出していた。

泰宏くんの言う通り、思いがけない行動をされたらドキドキする……

その通りだと思った。

「こんなとこにいた!市川。」

「晃くん。どうしたの?」

「教室にいてよ。探したじゃん。」

「え?ごめんね。何か用事?」

目が合うとドキドキするから、目は合わせない。

「市川さ……少し、自分が可愛いってこと、自覚した方がいいよ?」

「え?」

晃くんが近づいてきた。

朝の光景を思い出す。

「や!晃くん!ストップ!」

「なんで?」

「朝みたいなの困るから。」

うつむいて話す。

「壁ドン?」

その単語を聞いたら、体が熱くなっていった。

「そーだよ!もう。ほんと……あーゆーの、やめてよ……」

「市川が俺と目合わさないからだろ?!」

そう言いながら近くまできた!

「だって……」

ドキドキするんだもん。

晃くんが怖いんだもん。

そう……怖いの。

ドキドキはするよ。だけど、怖いの。

「怖いの。晃くんのことが。」

そう伝えた。

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