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ぜんぶ二人ではじめて

第34章 贈り物

「あの…俺たち、ずっと学園あがりなので、いろいろ知ってます。」

「そう…なのね。それじゃあ、百華のことも…」

「はい。」

「そう。七海は何か聞いてくる?」

「いえ。七海さんは、百華さんのこと、思い出さないようにしているんでしょうね。」

「違うのよ。忘れてしまってるの。」

「え?」

「百華が亡くなってから七海はショックで何ヶ月も眠ったままだったの。原因が分からなくて…時折寝言を言っては涙を流して…の繰り返しだった。目を覚ましたきっかけも分からないけど、目を覚ましたら、何事もなかったかのように日常に戻っていったわ。私たち夫婦の夢に百華が出てきて、七海に忘れてもらいたいって懇願してくるの。七海は明日目覚めるから、そしたら私のことは忘れてるからって百華が話した次の日、ほんとに七海は目覚めて、ほんとに百華のことは、忘れてたの。…こんな話し、信じがたいでしょうけど、本当なのよ。…ヤスくんは百華が亡くなった後に引っ越してきたから、百華のことは知らないでしょう?だからヤスくんから百華のことを聞くことはないだろうから良かったのかもしれないけど、最近、また百華が夢に出てくるの。何も話さないけど、そうやって忘れてしまうのはなんだか虚しくて…。あなたたちは百華のこと、少しでも覚えているなら、それで良いんだけど。」

「…そんなことがあったんですね。」

「七海さんに無理矢理思い出させるようなことはしてほしくないんですね?」

「えぇ。きっと、何かのきっかけで思い出すと思うの。その時、もし、七海が苦しんだり、思い悩むようだったら、力になってあげて?」

「はい。」

「それと、これ。私の連絡先。七海がもし思い出したら連絡ちょうだい?」

「はい。」

「ありがとう。陸翔預かるわ。」

美空が眠ったのでリビングに向かった。

そんな会話があったなんて知らずに。

「みんな、ごめんね。母さん、美空、寝たよ。」

「ありがとう、七海。」

「市川、俺たちそろそろ帰るよ。」

悦史くんが言う。

「うん。」

「また今度ゆっくり来ても良い?」

竜一くんが言った。

「うん!花束、ありがとう!」

そして、みんな帰った。

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