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ぜんぶ二人ではじめて

第35章 お誘い

卒業式の片付けを終えて、帰ろうと支度をしてると、晃くんが、

「ヤスくん……ちょっといい?」

と、ヤスくんに声をかけてきた。

「ナナちゃんはいいの?」

ヤスくんが聞く。

「市川、ちょっとヤスくん借りるよ。10分くらい、待ってて?」

「うん。」

何だろう?

二人の後ろ姿を見送って、私は教室の椅子に座って、ボーッとしてた。

「あれ?七海ちゃん、一人?」

「昌樹くん。うん。今、ヤスくん、晃くんと話してるの。」

「そうなんだ。俺も彩月待ち。」

「彩月ちゃん、どうしたの?」

「卒業した先輩に……多分、コクられてる。」

「えっ?!?」

「断るっていってたから大丈夫だよ。」

「それはそうだろうけど……。昌樹くん、どうしてそんな不安そうな顔してるの?」

「不安つーか、心配なだけ。」

「だったら遠くからでも見に行けば良いじゃない。」

「あ、そっか!」

「そうだよ。彩月ちゃん、どこに行ったの?」

「体育館の方。」

「早く行ってあげた方がいいよ?!」

そう話してると、

「昌樹!!!!!来い!!!!!」

ヤスくんが顔色変えて昌樹くんの手を引っ張って昌樹くんを連れていった。

え?何?

「市川も。」

「え?晃くん?」

「悪い。ヤスくんと話してたら悲鳴が聞こえて、声する方に走って行ったんだけど、見つけた時には、金田が!!!」

「何か……されたの?」

「今は竜一がついてるから大丈夫だよ。」

「何されたの?」

「多分……リンチ……」

「え?……リンチ?」

とは、何ですか?なんて聞ける雰囲気じゃなくて……

体育館の渡り廊下に倒れている彩月ちゃんの姿が見えた。



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