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ぜんぶ二人ではじめて

第35章 お誘い

side 泰宏

卒業式。

やっと四月から二年生になれる。

あと二年……なげーなー……

卒業生に握手を求められたナナちゃん。

先輩方から気に入られてることは知ってたけど、まさか、ファンクラブがあったとは!

俺はナナちゃんが一人一人と握手するのを見守ってた。

万が一、抱きついたりしようもんなら、全力で、阻止する!

そんな覚悟で。

まぁ、握手だけですんだからよかったが。

放課後、晃くんに呼ばれた。

「話って?」

俺はナナちゃんを一人にしたくないから、手短でお願いしたかった。

「ヤスくん、昔、野球やってたろ?」

「あぁ。」

「もう一度、やる気はない?」

「やりたくてもムリなんだよ。」

この話は一週間前、ナナちゃんとの旅行での帰りの電車で話したばかりだ。

この話ばかりだな。

「ケガ?」

「あぁ。前十字靭帯断裂して、手術もしてるんだよ。」

「マジ?」

「あぁ。晃くんも気をつけてね。」

「リハビリとかしたんだろ?機能的な回復はどうなの?」

「まぁまぁかな。体育くらいならいけるけど、部活みたいなハードなことはできない。」

「そうなんだ。……少しずつで良い!それを乗り越えて、一緒に甲子園目指さないか?」

「は?」

その言葉に対して、そんな反応だったが、内心、ドキドキワクワクが止まらなかった。

「返事はすぐじゃなくて良いよ。高2、高3と二年間ある。俺の球を受けてもらえないかな?」

晃くんの真剣さに圧倒された。

「……考えとくよ。」

「ありがとう!市川にも話したいんだ。」

「そうしてくれ。」

その時!!!

「キャーーーー!!!」

女の悲鳴だ!

「なんだ?」

「どの辺りだ?」

俺と晃くんは駆け出した。

校舎と体育館がある廊下は、渡り廊下がある。

声がこだまして、場所を特定するのが難しかった。

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