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ぜんぶ二人ではじめて

第35章 お誘い

俺たちより先に駆け出してる人がいた。

「竜!」

「あ!晃!ヤスくん!今、悲鳴聞こえなかった?」

竜一くんが話す。

「聞こえた!どの辺りだろう?」

晃くんが答える。

「俺、トイレ見てくる!」

走りながら、竜一くんが方向を変えた。

「いたら叫べ!」

「分かった!」

二人の連携はさすがとしか言いようがない。

「俺たちは体育館の方、見てみるか。」

晃くんにそう言われて、体育館の方に向かう。

「そうだな。」

そう答えてまもなく…

渡り廊下に誰かが倒れているのを見つけた。

近くには木製のバット。ライター……

俺は…ゾクッとした。

「さ!彩月!!!」

変わり果てた彩月の姿に俺は…近寄って…耳許で声をかけた。

でも、反応がない。

「昌樹!!!!!あ!竜一くん!俺、昌樹呼んでくる!彩月についててもらえる?」

走ってきた竜一くんに任せる。晃くんに頼めば良かったのに。目に飛び込んできたから竜一くんに頼んだのだろう。気が動転していてあれこれ考えられなかった。

「分かった!」

「俺も行って、市川に説明する。今のヤスくんじゃそこまで気が回らないからな。」

晃くんの声が微かに聞こえた。

「了解!とりあえず、救急車呼んどくわ!」

「頼んだよ!」

そして、俺と晃くんは教室に走った。

彩月……

頭から血を流して、足、めちゃくちゃ腫れて、腕も……

腹とか大丈夫なんかな?

教室についた。

「昌樹!!!!!来い!!!!!」

思いっきり腕を引っ張って、連れていった。

晃くんがナナちゃんに説明してくれてる。

リンチに遭ったのだろうけど、ナナちゃん、リンチ分かんないだろうな。

あ。ナナちゃんにあの変わり果てた姿を、見せてしまったら、ショックを受けて、どうなるか分からない。

「ナナちゃん!彩月、血が流れてるんだ。見ても大丈夫?怖かったら見なくて良いからね。」

「え!彩月ちゃん!!!血なんて平気!手当てが必要なんじゃ?」

「頭、うってる可能性が高いから動かせない!」

「分かった。」

そしてナナちゃんは、携帯を取りだし、

「父さん!今どこ?家?学校に仕事道具持ってすぐ来て!お願いッ!彩月ちゃんが、大変なの!」

そう伝えた。

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