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ぜんぶ二人ではじめて

第35章 お誘い

side 泰宏

彩月が助かった!

ホッとした。

ふぅーっ!

思わず息を吐き出した。

「父さん、ありがとう……」

ナナちゃんがそう言ったその後、

目の前で倒れた。

「ナナちゃんッ!」

「七海!」

「市川!」

真っ先にお父さんが抱き抱えた。

ナナちゃんのお父さん、マジでカッコいい。

彩月が入院する部屋が二人部屋で、今のところもうひとつのベッドも空いているというので、ナナちゃんもそこに寝かせることになった。

彩月は左足の腓骨骨折、右前腕開放骨折、左上腕剥離骨折、頭は軽度の打撲、そして、鎖骨下動脈の僅か2㎜反れた部分を鋭利な刃物で刺された傷があったそうだ。

その傷が一番厄介で、肺と動脈、静脈にとても近くてしかも、ガラスの破片なんかも入っていたそうだ。

リハビリ期間入れて、全治3ヶ月……

ただ、まだ、意識が戻らない。

昌樹がずっと彩月の手を握って、祈ってる。

もし、ナナちゃんが彩月と同じ目に遭ったら……

そう思うと、俺は昌樹を放っておくことはできない。

彩月の両親も彩月の傍から片時も離れない。

美月も円香と俺の両親と一緒に来た。

ナナちゃんのお母さんも双子ちゃん連れて、来た。

「お姉ちゃん……」

美月が泣き出した。

円香が美月の手を握ってる。

真相は、彩月が目覚めない限り、不明のままだ。

俺は昌樹の近くにいた。

ナナちゃんの顔も見える場所だ。

すやすや寝てる、ナナちゃん。

すやすや眠ってるようにしか見えない、彩月。

「んっ……」

ナナちゃんが目を醒ました。

「ナナちゃん。大丈夫?」

「あ。私……倒れたの?」

「あぁ。」

「彩月ちゃんが大変な時に、ごめんなさい。」

「良いんだよ。ナナちゃん、彩月助けたくて、ものすごく頑張ってたんだから。緊張の糸が切れたんだよ。」

俺がそう言って、起き上がったナナちゃんを支える。

「ありがとう。彩月ちゃんは?」

「まだ。」

「そう……」

彩月……

みんな心配してるぞ。

早く起きろよ。

「ん?」

昌樹が反応した。

「どうした?昌樹?」

「今、指、動いた気が……」

「本当?」

「彩月!」

「彩月ちゃん!」

「お姉ちゃん!」

みんなで声をかける。

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