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ぜんぶ二人ではじめて

第35章 お誘い

「彩月……一人で行かせてごめん。」

昌樹が自己嫌悪になってた。

そうか。そうだよな。

一人で行かせなかったら……

遠くからでも見守っていたら、阻止できたはずだもんな。

「でも、彩月、何も悪くないじゃん。そいつらの顔は分からない?」

俺はそれでもそいつらに物申したい!

バカなことしがって!

それでも人間か!って。

「タオルみたいなの、顔に巻いてたから、顔は見てない。」

「そぅか。」

「遊汰……って、野球部の元キャッチャーだね。……その人に好意を寄せていた人たちを探せば見つかるんじゃない?」

ナナちゃんが泣きながら言った。

彩月の両親はずっと泣いてた。

「あとは警察に任せよう。」

ナナちゃんのお父さんがまとめてくれて、ひとまず今日のところは帰った。

帰るときに、

「ヤスくん!」

ナナちゃんのお母さんに呼び止められた。

「はい?」

「ヤスくんのご両親にもご挨拶させて?」

「あ!私も!」

ナナちゃんがそういった。

「はい。父さん、母さん!ちょっと……」

俺は二人を呼び止めた。

「こんなときの挨拶で申し訳ありませんが……七海の母、すみれです。娘がいつも大変お世話になっております。」

ナナちゃんのお母さんが深々と頭を下げた。

「あ!七海です。はじめまして。」

ナナちゃんも頭を下げた。

「泰宏の父です。こちらこそ。いつも泰宏がお世話になりっぱなしで。ご迷惑おかけしていませんか?」

「迷惑なんてとんでもないです。泰宏くん、いつも七海を支えてくれて、とても優しくて頼れる好青年です。立派なご子息で、うちの七海の方が至らないところばかりだと思います。」

ナナちゃんのお母さんがそう言った。

「泰宏の母です。こちらこそ、ご挨拶が遅くなってしまって……すみません。いつも泰宏がお世話になっております。七海ちゃんとお付き合いするようになって、泰宏はますます逞しくなったように感じます。いつもお邪魔してばかりで……すみません。よかったら今度、遊びにいらしてください。」

母さんが優しく微笑む。

なんだか照れるなー。

「ありがとうございます。」

ナナちゃんが答えた。

遅れて、ナナちゃんのお父さんが来た。

「七海の父です。ご挨拶が遅くなり、すみません。いつも泰宏くんにはお世話になっております。」

これで親公認となった!

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