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ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

side 泰宏

何だか嫌な予感がして、保健室へと急ぐ。

ガラッ!

やっぱ田中先生いない。

「ナナちゃん、入るよ?」

「ヤスくん、助けて!」

声が!

何だ?

カーテンを開けると、

「和樹!てめぇ!」

ナナちゃんが寝てるベッドに、昌樹の年子の弟、和樹が、乗ってた!

「ヤス兄、七海ちゃん、ちょうだい!?」

こいつは昔から顔が良いからモテて、めちゃくちゃ女遊びしてる。

「やるわけねーだろ!どけよ!」

静かな保健室に俺の怒鳴り声が響く。

「ちぇっ……残念。」

こいつ……一発ぶん殴ってやろうか!?

「何しに来たんだよ。」

「彩月の母ちゃんから昌樹に届けてほしいものがあるって言うから、俺、これからデートだからついでに頼まれてやったの。これ、ヤス兄から昌樹に渡しといて?ヨロー!じゃ!七海ちゃん、今度、ヤらせてね!」

そう言ってバックレようとするから、

「和樹!!!待て!!!」

引き留めた。

俺が胸ぐら掴もうと近寄るより早く、ナナちゃんが、

パシッ!

和樹の頬を叩いた。

「私、あなたみたいな人、キライ!私はヤスくんと本気で恋愛してるの!あなたがつけ入る隙なんてないんだから!」

ドサッ!

ベッドにナナちゃんを押し倒した。

「本気の恋愛?そんなもの存在しない。」

そう言った。

俺はナナちゃんがキスされると思って、引きはなそうとした。

「だったら!遊ぶ恋愛を楽しめば良いでしょ?私を巻き込まないで!!!どいて!」

ナナちゃんの毅然とした態度にハッとして、

引きはなし、そのまま胸ぐら掴んで、

「分かったか、和樹。俺たち、真剣なんだよ。」

「分かったよ。悪かったよ。」

そう言って、保健室から出ていった。

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