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ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

私たちは降りる予定のバス停より一つ手前で降りた。

近くの公園に入って、ベンチに座る。

「美月、大丈夫か?」

ハンカチを差し出しながらヤスくんが美月ちゃんに気を使う。

「気がついてたの?」

美月ちゃんが涙を拭いながらヤスくんを見る。

「ナナちゃんがな。俺のとこからは見えなかった。」

「私、あの人に毎日、……痴漢されるの。」

「えっ?」

私とヤスくんが声をそろえて驚いた。

「どこから乗っても、時間ずらしても……必ず……」

「お前、それ、ストーカーじゃねーかよ。」

「心当たりないの?」

「前に、合コンしたことがあって、その時にいた人のような気もするんだけど……」

「円香は知らねぇの?」

「円香は、合コン行ってないから……」

「そぅか。」

「私も行く予定じゃなかったんだけど、お姉ちゃんの病院の帰りに一人でバス待ってたら、たまたま人数欠けちゃったからって頭数合わせで誘われて…」

「そぅか。相手が分かってるなら、法的措置とれるだろ。」

「やだよ。そんなことしたら、私が痴漢に遭ってるのがみんなにバレちゃうじゃん。」

「あー…そぅか。おばさん、朝、学園前通って仕事行くじゃん!乗せていってもらえよ。」

中等部女子はバスで通う子がほとんどだ。

「…なんて、話せば良いのよ。」

「俺が話しといてやるよ。」

「うまく話してくれる?」

「あぁ。ついでに円香も乗せていってもらえば良いじゃん。母さんと持ち回りでさ。」

ほんと、ヤスくんて機転がきくなー。

感心しながら聞いていた。

美月ちゃんがポロポロ泣いてる。

「お前、一人で抱え込むなよ。」

「ヤス兄は、私が痴漢されて、私に落ち度があるとは思わない?」

「思わない!お前が裸になって、そいつを誘ったならともかく、痴漢なんてバカなことやるのは、ヤル方が悪いに決まってんだよ。……なんだ、美月、お前、そんな風に自分を責めてたのか?」

ヤスくんの優しい声が響く。

コクン……と頷いた、美月ちゃんを見て、ヤスくんは、

「お前は悪くないよ。」

もう一度優しくそう言った。

美月ちゃんの涙が止まらない。

私が美月ちゃんの立場だったら……

そう考えただけで、毎日暗い気持ちで過ごすことが想像できる。

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