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ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

side 泰宏

ナナちゃんが美月に寄り添って頭を撫でた。

こんなに泣きじゃくる美月を見るのは、彩月がリンチされた時以来だ。

痴漢に遭うのは自分が悪いと思ってたのか。

俺は円香が、

『最近、美月、元気ないの。朝も帰りもいつも一緒に学校行ったのに別々だし。でも学校では普通なんだよね。』

と、話していたのを思い出した。

そうか。朝と帰りに元気がないのは、痴漢に遭うからだったんだな。

「美月ちゃん、ヤスくん、うまく話してくれるから、きっと大丈夫だよ。美月ちゃんは笑顔が似合うよ。元気出して。」

「ありがとう、七海ちゃん。……いいな。七海ちゃんは。いざというとき頼れる人がいて。」

美月がそんな風に話していた。

「ナナちゃんは大丈夫?」

俺はナナちゃんのことも気になってた。

ナナちゃんも元気ない。

「……気持ち悪かった。」

ポソッと呟いた。

「バスに酔った?」

「ううん。痴漢て、ただ触るとか、そういうのしかないと思ってたから……ああいうの、理解出来なくて……。他の男の人の見たから気持ち悪くて……。」

「そっか。嫌なもん見ちまったな。」

「うん。……美月ちゃんは毎日、ああいう目に遭ってたの?」

ナナちゃんが恐る恐る聞いた。

「今日は正直何されたかよく分からないんだけど、いつもは、……触られたり……する。私、何されてたの?」

「いや、知らない方が良いよ。それが美月のためだ。」

そう答えた。

「他の男の人のを見たから?さっき、七海ちゃん、そう言ったよね?」

こいつ、ちゃんと聞いてたな。

「あー……えっと……」

ナナちゃんが困ってる。

「それって……もしかして……アソコ?」

隠せなさそうだな。

「あぁ。痴漢してたヤツ、美月のしりに押し付けてたんだよ。」

「ヤスくん!」

ナナちゃんが止める。

「もう隠せないよ。」

「え?で、何?出してたの?」

美月は頭が良いからな。辻褄があっちまったんだろうな。

「そ。その場で一人でしてたよ。」

俺は見てないが。

「やだ!やだ!気持ち悪い!あぁ、でも、見なくて良かった。見てたら男の人、嫌いになってたかも。」

「そうだな。で、それを見ちまったのがナナちゃん。」

「それは、嫌だよね!ごめんね、七海ちゃん。巻き込んじゃって。」

「ううん。」



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