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ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

side 七海

「彩月ちゃん!」

病室に入るなり、私は彩月ちゃんのところへ駆け寄った。

「わーい!みんな!待ってたよー!」

明るくて、本当に場を盛り上げてくれる、彩月ちゃん。

学校にいないのは、寂しい。

だから、毎日のように会いに行く。

「彩月、調子はどう?」

昌樹くんが尋ねる。

「うん。腕は大分良いよ!」

明るい笑顔で答える。

「美月?どうした?元気ない?」

彩月ちゃんが気にかける。

「あぁ、バス、めちゃくちゃ混んでたから、一つ手前で降りて、歩いて来たんだ。疲れたか?美月?」

ヤスくんが言う。

「うん。少しね。大丈夫だよ。」

美月ちゃんがやんわり笑って答える。

「あ。そういや、これ。彩月の母さんに渡すよう頼まれた。」

そう言って、昌樹くんが、手渡す。

「あ!ありがとう!待ってたー!」

中身は、ジグソーパズル!

「パズル?」

「そ。リハビリにもなるし、暇潰しにもなるでしょ?」

「なるほど!」

彩月ちゃんは、勉強が遅れちゃうから、一度、転校扱いで病院内にある高校に通う。

父さんが、昼間は元気そうだけど、夜は一人だと怖いみたいで、あまり眠れないそうだって言ってた。

確かに少し、笑顔に張りがない。

早く元気になってほしいな。

昌樹くんや美月ちゃんが泊まれれば良いのにな。

父さんに話してみようかな。

そんなことをぼんやり考えていた。

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