テキストサイズ

ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

翌日。
部活後……ここのところ、告白続きで、ちょっと、しんどい。

みんな良い人だな。

私の幸せを願ってくれる。私が困った時に助けてくれる。

そんな風に想える恋……って、とても深い気がする。

みんなきっと、大きい心を持ってるんだね。

部活が終わって帰ろうと、運動部の部室の前を通った。

少し前に泰宏くんが昌樹くんと帰ったんだけど……

少し離れたところで、晃くんと泰宏くんがキャッチボールをしているのが見えた。

でも、泰宏くんが、キャッチャーみたいに座ってた。

「あ!市川さん。」

昌樹くんが話しかけてくれた。

「帰ったんじゃなかったの?」

「うん。晃くんが、ヤスくんに勝負を挑んできてさ。」

「勝負?」

「そ。」

「なんの?」

「あっ!晃くん、負けた。」

「負けた?」

「うん。ま、内容は、二人に聞いて?」

「うん。」

タッタッタッ!

走ってこっちに来る、泰宏くん。

トボトボ歩いてくる、晃くん。

「二人とも何の勝負をしていたの?」

私が聞くと、

「昌樹に聞いた?」

と、泰宏くん。

「うん。」

サッと木の影に隠れる、昌樹くん。そのまま手を振って、帰っていった。

「ったく!晃くん?市川さんに話すよ?」

「あぁ。」

もう好きにしてくれーって雰囲気。

「晃くんが、市川さんのことを無理矢理にでも振り向かせてやる!って言うから、市川さんが嫌がるようなことはしない約束だろって念を押したんだ。そしたら俺には俺のやり方があるだの言うからムカついてきて、晃くんの最速の球を連続で受けられたら、勝手なことしないって約束してもらうことになったってわけ。」

そう説明してくれた。

「そうだったの。晃くん……。変だね。最近。」

ポロッと言うと、

「市川が俺の心の中に住んでるんだよ。現実でも俺だけの市川になってほしい……。」

少しずつ、近づいてくるから、身構える。

泰宏くんがいるから大丈夫だよね。

「市川……」

でも、心臓が暴れ出す。

ドキドキ……ドキドキ……

「俺、世界中を敵に回してでも、市川のことが好きだ。」

ドクン……

鼓動が大きく鳴った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ