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ぜんぶ二人ではじめて

第4章 晃くんが分からない

泰宏くんが家まで送ってくれて、

「少し……寄って行かない?」

なんて誘ってしまった!

「ありがと。まだ心配だから……そうさせてもらうよ。」

そう言って二人で玄関へと向かう。

ぼーっとしてるというか、なんと言うか……

リビングに通して、お茶を……と、思ったら、

「そんなの良いよ。休みなよ。」

「え?」

「市川さん、熱、あるんじゃない?」

「え?そうなの?」

「測ってみたら?」

「うん。」

すると、ピピピピッ!

「ある?」

「えっ…」

「どれ?38.6℃?そんなにあるの?やっぱ熱あるじゃん。着替えて寝なよ。」

「……喉渇いた。」

「飲んだらベッド行きなよ。」

「はーい。」

水を飲んだ。気持ち良い。

私、熱でぼーっとしてたんだ。

歩こうとして、足元がふらつく。

その場にへたれこむ。

「ごめん。連れてくよ?まともに歩けてない。」

「ん?泰宏くん……ありがと。」

「立てない?」

「うん……」

「仕方ない……」

そう言って、

ヒョイッと、抱っこ……で、運んでくれた。

ドキドキドキドキ……

ドキドキするのは熱のせいだけじゃないよね。

「部屋、二階?」

「うん。階段、あっち。」

「ん……」

静かに階段を上がる。

部屋のドアを開ける。

ベッドにたどり着く。

そーっと下ろしてくれる。

まだ、こうしていたいのに……

「泰宏くん……」

「何?」

「ありがと。」

「いいえ。着替えは?」

「あ、あれ。」

朝、畳んだパジャマを指差す。

「はい。じゃあ、あとで着替えるんだよ?」

そう言って着替えをベッドの端に置く。

「うん。」

泰宏くん……行かないで……

「じゃあ、俺、帰るよ。お大事にね?」

そう言って体をドアに向ける。

「あっ!待って……」

「どうしたの?」

「す、少し……だけ……ここにいて?」

そう言って、キュッと、今度は指を一本だけ、握った。

「(ゴクッ)……ん。いいよ。」

そう言って、泰宏くんはドレッサーの椅子を持ってきて、近くに座ってくれた。

手……

握ってほしい……

もぞもぞ。

ベッドの外に手をだす。

「暑いの?」

「……ううん。」

「手、入れておきなよ?冷えちゃうよ?」

「……泰宏くん……手、握っちゃダメ?」

やっとの思いでそう言った。

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